<事例/質問>
ヴィンテージ時計のリユース業者に振り込んだお金が、返ってきません。
電話はつながらない。
ホームページは立派だが、代表者の名前は頭文字だけ。
本社所在地として大書きされたビルを地図アプリで検索すると、出てくるのは貸し会議室と、集合郵便受けでした。
「こうなったら、探偵社に調査を依頼するしかない」
と思って、興信所のホームページをいくつか開いてみました。
見積金額の桁数を見て、ため息をついています・・・。
<鐵丸先生の回答・アドバイス・指南>
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」
と申しますが、敵を知るために、こちらの兵糧(資金)を使い果たしてしまっては、戦う前に干上がってしまいます。
依頼を検討しているその興信所、本当に信頼できますか。
探偵社も、興信所も、調査会社も、ほぼすべて
「探偵業」
の届出が必要な許認可業種です。
リユース業者も同様で、
「古物商」
の届出が必要です。
ご安心ください。
あなたが今まさに、依頼しようとしている興信所の素性は、実は、コーヒー1杯分程度で、あなた自身が調べることができます。
許認可業者は、素性を当局に預けている
古物商、探偵業——これらは、都道府県公安委員会への許可・届出が必要な業種です。
「探偵」「古物」「風俗」、
いずれも
「警察が監督するビジネス」
という点では同じです。
警察が管理しているということは、そこには必ず、業者が自ら提出した
「氏名」「住所」「役員構成」
などが書かれた公的な書類が存在することを意味します。
これを活用しない手はありません。
まず「リスト」で存在を確認する
警視庁文書課(または各都道府県警察・情報公開窓口)に出向き、探偵業届出業者の一覧や届出状況を確認します。
ここで確かめるのは、その興信所の名前が、リストに
「ある」
か
「ない」
か。
もし見当たらなければ、無届け営業の可能性があります。
それだけで、相手のメッキは1枚剥がれます。
ホームページ上の屋号と届出上の屋号が、数文字だけ異なっているケースもあります。
「〇〇探偵事務所」
と
「〇〇総合調査事務所」。
そのわずかなずれの中に、相手の都合の悪い事情が潜んでいることがあります。
コーヒー1杯の値段で届く、届出書の写し
存在を確認できたら、届出書そのものの写しを請求します。
「情報公開請求」
というものです。
東京都・警視庁の場合、閲覧するだけなら無料。
写しの交付を受ける場合は、コピー代などの実費負担が必要になります。
白黒1枚10円程度のことが多く、全体でも数十円から数百円程度に収まるケースがほとんどです。
この程度の金額で、代表者名・役員の氏名・開業年月日など、相手の情報が、手元に届くということです。
ホームページに
「業界歴20年」
と華々しく書いてある探偵社が、届出書の上では昨年登録したばかりの新参者だった、ということも、珍しくありません。
「ノリ弁」が返ってきたら、次の手を使う
もちろん、警察も個人情報保護を盾に、肝心な部分を黒く塗りつぶしてくる(いわゆる「ノリ弁」状態で開示する)ことがあります。
あるいは
「不開示(見せない)」
という決定をするかもしれません。
審査には2週間程度かかります。
その間は、怒りを抑えて、冷静に準備を整える時間に充てましょう。
もし開示された書類が真っ黒だったり、不開示だったりした場合、その時初めて弁護士に相談し、
「弁護士会照会(23条照会)」
を検討します。
弁護士会を通じて、官公庁・銀行・通信会社といった普段は口の固い相手にも、正式な回答を求めることができる制度です。
ただし、弁護士への依頼費用が別途かかります。
数十円の情報公開請求で埒が明かなかった場合の、次の一手として知っておく価値はあります。
結論:まずは数十円の窓口を叩く
興信所の何十万円という見積書の正体は、知っている側と知らない側、その差をお金で埋めるビジネスです。
要するに、
「相手がどんな会社なのか分からない」
という不安を、お金で解消するサービスです。
行政の情報公開はというと、消費者の不安を少しでも減らせるように用意している仕組みです。
興信所に高額で調査を依頼する前に、まず、その興信所を調べましょう。
警察署の、役所の、文書課の窓口。
その奥に、数十円で受け取れる相手の
「すっぴんの履歴書」
が、静かに待っています。
まあ、私なら、ヴィンテージの時計を買う前に、そのリユース業者を調べていたかもしれませんね。
著:畑中鐵丸