00188_ビジネスプロジェクト失敗に備えるということ

0018700186を、攻守を逆に考えたものです。
想定QAを事前に作成しておけば、
「落ち武者狩り」
にも対抗できるでしょう。

そのためには、変更の痕跡管理を徹底することです。

方針や目標が変更された際、いつ、どのように変更されたのかを明確に追えるよう、痕跡をしっかり残すことです。


1 失敗を見越した事前準備

万が一の事態に備え、状況を整理し、説明のための記録を残しておくことが重要。
プロジェクトがどのようなリスクにさらされ、どのような対応策が検討されてきたのか、履歴も含めて検証しているか?

2 証拠となるデータの保持

将来、責任の所在が問われたとき、証拠として使える形で必要なデータや記録を保持しているかどうか。

3 対外的な説明準備

失敗が発生した場合、なぜそのプロセスや方針が採用され、どのように変更が行われたのかについて、外部に対して明確に説明できるよう準備を怠らない。

4 楽観主義に偏らない戦局認識

プロジェクトの失敗を考慮することは、自らの立場を守る手段であると同時に、関係者全員を守る行動でもある。

5 検証結果を振り返る機会とする

失敗した際には、反省の材料とし、次に活かすための
「良き学びの機会」
として捉える。


プロジェクト推進者の仕事は、あらゆるリスクを見越し、責任ある立場として記録を残し、
「適切な行動を取った」
と、後から説明できるようリスク管理の方法を決定することにあります。

「慎重に対応する」
ということは、
・身の程をわきまえ、
・楽観バイアスに惑わされず、
・戦う前に逃げ道を確保する狡猾さを持つ
ということです。


尚、生き残る人間とは、戦う前にリアルに負けを想定できる人間です。

自決の場面をイメージし、自決用の安楽死薬を用意しておくと、精神的余裕が生まれ、バイアスなく戦局を客観視できます。

結果として、高い割合で勝つか、少なくとも生き延び、自決の準備は無駄に終わるのです。

卑怯や卑劣と思われるかもしれませんが、古代中国の天才戦術思想家もこう言っています。
「三十六計中、逃げるが上策なり」


プロジェクトが成功すると信じることは重要ですが、度を超えた楽観主義は、自分と関係者を地獄に突き落とします。

「単純な成功を目指して仲良く、楽観的に考える」
のではなく、
「プロジェクトが失敗した場合に、適切に行動したことを説明できるようにして、落ち武者狩りに会わないこと」
と認識し行動することこそが、
「他人のカネやリソースを使ってプロジェクトを推進する者としての誠実さである」
といえるでしょう。

著:畑中鐵丸

00187_ビジネスプロジェクト失敗に備える(その2)_プロジェクト担当者のための事前チェックリスト

プロジェクト担当者として、プロジェクトの責任を果たすためには、準備段階から確認が欠かせません。

以下は、プロジェクト進行中に発生するリスクや課題に備え、適切な行動が取られていたかを事前に準備するためのチェックリストです。

プロジェクトが円滑に進み、説明責任を果たせるように、各項目について慎重に確認していきます。

推進方策の確認

1 プロジェクト全体のオプション調査

プロジェクトのビジネス目標に照らし、実行上の障害(コスト、労力、全体的な負荷)もふまえたうえで、すべてのデリバリオプションを調査したか。
関係者間で十分な議論を行い、リソース配分や現実的なコストについて合意が得られているか。

2 ビジネスニーズの共有と変化への備え  

プロジェクトのビジネスニーズが、主要な関係者と共有され、全員が共通の認識を持っているか。
また、プロジェクトオーナーや上層部から方針変更があった場合、それを適切に記録し、関係者全員に通知する手続きを設けているか。

3 要求仕様とプロジェクト成果の整合性  

プロジェクトの成果物が、当初の要求仕様を確実に反映しているか。
また、成果物が要求仕様から逸脱している場合、その要件を満たすための調整がどのように行われるか、あらかじめ関係者と合意が取れているか。
変更が発生した場合に、承認プロセスと履歴が記録されるよう体制を整えているか。

4 調達ルートの検討状況  

調達において、供給元のリソースや価格を考慮し、低廉かつ合理的な選択肢が検討されているか。
また、選定基準やコスト面での妥当性について、判断根拠を明確にし、記録が残されているか。
調達における全体のコストがビジネス目的に照らして妥当であるかを確認しているか。

5 プロジェクトのマーケット価値に関する仮説検証  

プロジェクトが市場での関心を引き、ビジネス価値を発揮するものとする仮説を立て、検証を行っているか。
仮説に対する異論や意見が出た際、関係者間で議論し、責任範囲や意見の違いを明確に整理しているか。

6 調達手順の客観性・妥当性  

調達手順に客観性と妥当性が確保され、主要な関係者や上層部も同意しているか。
プロセスが透明で、不明瞭な部分がないかを確認し、調達の妥当性を証明できるよう、必要な記録を残しているか。

7 推進段階取りの明確性と合意  

プロジェクトの推進段階が明確に定義され、各段階で主要な関係者からの承認が得られているか。
進行中に修正が必要な場合、その内容が速やかに関係者全員に共有され、適切な手続きを通じて反映される仕組みがあるか。変更内容の履歴も記録しているか。

 プロジェクト推進戦略に関するリスクの認識  

プロジェクトオーナーや関係者が、プロジェクト進行に影響を与える可能性のあるリスク要素をあらかじめ認識しているか。
リスクを明確に記録し、状況に応じて適切な対応が取れるよう、リスク管理計画を整えているか。


上記の各項目を事前に確認することで、プロジェクトの進行過程での判断の妥当性と管理の透明性を確保し、最終的に責任の所在を明確に示す準備が整います。

著:畑中鐵丸

00186_ビジネスプロジェクト失敗に備える(その1)_査問用チェックリストと質問事項

ビジネスプロジェクトが失敗に至った場合、プロジェクトの目的達成や責任の所在について明確にし、関係者が適切な行動を取っていたかを検証するために、以下の項目を査問します。

このチェックリストでは、プロジェクト遂行の各段階での関係者間の認識共有、リスク管理、調達手順の妥当性が確保されていたかどうかを確認します。

推進方策の確認

1 プロジェクト全体のオプション調査について 

プロジェクトのビジネス目標と実行上の障害(コスト、労力、全体的な負荷)をふまえ、デリバリに関する全オプションが調査されていたか。リソースやコスト面も含め、プロジェクト達成のために現実的で合理的な選択肢が十分に検討されていたか。

2 ビジネスニーズの共有と変化への備え  

プロジェクトのビジネスニーズが、主要関係者間で共通認識として確立されていたか。
また、プロジェクトオーナーや上層部による方針変更(「ゲーム・チェンジ」など)に備え、その変更が適切に記録され、関係者全員に共有されていたか。

3 要求仕様とプロジェクト成果の整合性  

プロジェクトの成果物が当初の要求仕様を正確に反映していたかどうか。
また、成果物が仕様と異なる場合、ビジネス要求を満たすための調整が行われたか。
要求仕様に変更があった際、その承認プロセスや履歴が適切に記録されているか。

4 調達ルートの検討状況  

調達にあたり、供給側のリソースや価格を考慮した上で低廉な選択肢が検討されていたか。
調達における選定基準や価格面での合理性がどのように判断され、その記録が残っているか。
また、ビジネス上でのコスト合理性も含めた検討が行われたか。

5 プロジェクトのマーケット価値に関する仮説検証  

プロジェクトが市場の関心を引き、ビジネスとしての価値を発揮するものであるかについて仮説が立てられ、その仮説がどのように検証されたか。
プロジェクトの効果やリスクについて異論が出た場合、その議論が適時に行われ、意見の違いに対する責任範囲も明確に区切られていたかどうか。

6 調達手順の客観性・妥当性  

調達プロセスにおいて客観性と妥当性が確保されていたか。
また、主要関係者や上層部もその手順に同意していたかを確認する。
プロセスに不透明な点がなく、調達の妥当性を証明できる記録が残されているか。

7 推進段階取りの明確性と合意  

プロジェクト推進における各段階が明確に定義され、主要関係者からの合意が得られていたか。
また、進行中に段階取りの修正が必要となった場合、その内容が関係者全員に共有され、適切な手続きが行われていたか。
その履歴も含めて確認する。

8 プロジェクト推進戦略に関するリスクの認識  

プロジェクトオーナーや関係者が、方針変更やプロジェクト戦略に影響を及ぼすリスク要素を事前に認識し、これを明確に記録していたかどうか。
また、そのリスクがどのように管理され、プロジェクト進行上で適切に対応されていたか。


上記の各項目を通じて、プロジェクト進行過程での判断の妥当性と管理の透明性を検証し、説明責任を追及することで、責任の所在を明らかにします。

上記は、総務省内の政府情報システム改革検討会の文書をお手本としています。

https://www.soumu.go.jp/schresult.html?q=%E6%94%BF%E5%BA%9C%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E6%94%B9%E9%9D%A9%E6%A4%9C%E8%A8%8E%E4%BC%9A#gsc.tab=0&gsc.q=%E6%94%BF%E5%BA%9C%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E6%94%B9%E9%9D%A9%E6%A4%9C%E8%A8%8E%E4%BC%9A&gsc.page=1

次の、32ページ~35ページを基に、ビジネスプロジェクトにおける合理的な想定質問として、整理したものです。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000104852.pdf

上記を参考に、他(たとえば、親会社と子会社間の共同プロジェクト等)にも応用できる、ということです。

著:畑中鐵丸

00185_不動産会社の法的アドバイスにどう向き合うか:非弁行為のリスクと実務的対応策の引き出し方

00181001820018300184について、もう少し補足しておきましょう。

もしも、今回の案件について、不動産会社が、契約書の有効性・無効性の違いなど、法的なアドバイスをして報酬を得えようとしたのであれば、非弁行為となります。

「弁護士資格を持っている者しか行ってはいけないと法律で定められている行為」
を弁護士資格のない会社(あるいは人)が行ったことになるからです。

不動産取引等において、不動産会社から法律的なアドバイスを受けたという事例を耳にしますが、その多くが誤解や認識不足に基づく、というようなことが少なくありません。

彼らは法律の専門家ではないため、結論が誤っていることがしばしばあります。

このような場合、不動産会社の説明を受ける側は
「2×2は6だけど、2×2×2は38ということでOK?」
といった狂気的な会話をしているような感覚に陥り、どこからどう修正を始めるべきか悩まされます。

このような状況では、あれこれと詳細な議論を重ねるよりも、
「君に意見は聞いていない。黙らっしゃい。できる対応のみ教示せよ」
という強いスタンスで対応するのが最も効果的です。

つまり、不動産会社のアドバイスの真偽を検証するよりも、あくまで
「非専門家が提供できる実務的な対応策」
を聞き出すように促すことが重要です。

不動産会社に対して
「非専門家が提供できる実務的な対応策」
を聞き出す場合も、
「ミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化」
を求め、実務的な対応策を、曖昧な言葉ではなく、具体的な形で示してもらうようにすれば、誤解を防ぎ、混乱を避けられましょう。

正確な法律判断が必要な場合は、法律の専門家である弁護士に相談し、専門的なサポートを求めましょう。

著:畑中鐵丸

00184_契約書有効性と信頼性を保障するための対応策

001810018200183について、補足します。

日本の民法においては、意思主義、すなわち、特段の文書や形式なく、相互の意思表示が合致すれば、それで法的に有効な契約が成立します。

じゃあ、
「契約書は何なんだ?」
という話になると、意思表示が合致した痕跡を証拠として残し、後日の紛争に備える、自主的な危機管理手段であり、任意のもの、という扱いです。

したがって、証拠の形式に特段の制約がなく、合理的経験則に照らして、当人の意思が反映された痕跡であれば、裁判になっても相応の耐性を獲得する、と考えられます。

「電子メールは法的に有効な証拠か?」
ということを、大真面目に議論しているサイト等がありますが、
「メールが改ざんされた」
との例外的な状況ではない限り、意思内容を立証する有効な証拠としては、十分認められることは疑いありません(ただ、取引の規模に照らして、表現や電子メールという体裁自体が異常なまでにカジュアルである、と裁判官が判断すると、意思が明確に反映されていない、とされることはあり得ますが)。

さて、本件(001810018200183)ですが、

本人確認していなくて、偽造(「本人の許可なく押印した」の意味)の可能性も否定できませんが、弁護士法の点ではやや微妙なビヘイビアとはいえ、一応、国から営業許認可をもらった不動産会社が借主と貸主の間にたって実務を担当していますし、彼らが、偽造をして、刑事罰に問われたり、許認可を剥奪されるようなことをあえてする動機に乏しい、ということもありますので、まあ、全く信用できないわけではなく、意思内容を示す痕跡としては、相応に取扱ができるレベルと考えられます。

また、表示された意思内容も、巨額の、異常な取引、というよりも、常識的で妥当で合理的な処理を明確にした文書であり、その点からしても、目くじらたてて、実印だ印鑑証明だ、とわめきたてる強度の必要性もなかったので、記名押印でよしとした、というスタンスもありかと存じます。

どうしても心配であれば、
「契約解除」
もあり得るかと思いますが、
「取るべきリスクと割くべき時間とエネルギーとのバランスを考えると、どうか」
というところでしょうか。

まあ、現実的な打開策としては、

1)立会人として、不動産会社の代表者に署名させる

2)さらに、賃貸人の記名押印の下部に、不動産会社から
「本件記名押印が、本人の意思を反映していることを表明し、保証する 不動産会社<印>」
と一文・名前・ハンコをもらう

のいずれかで対応して差し支えないような気がします。

旧賃貸人が入院中ということは、解除契約自体も微妙な感じになりますので、いずれにせよ、問題の根本は変わらないような気がします。

だとすれば、旧賃貸人の意思が明確にならないリスクを、保証人ないし不動産会社ないし双方に転嫁する方法が現実的でしょう。

著:畑中鐵丸

00183_ケーススタディ_契約における名前の表記と意思表示

<事例/質問>

アパートを経営しています。

先日、不動産会社から
「賃借人が高齢のため、賃借人および保証人の変更契約が必要」
との連絡がありました。

賃借人は入院し、自署や実印(印鑑証明付きの登録印)が難しいとのことです。

過去のご助言(0018100182)に基づき、以下のように最も強度の高い対策を取ることにしました。

対策1
「土地保有者及び賃貸人名義変更通知書」、「連帯保証人変更に関する覚書」(債権債務清算条項を効かせる)を作成し、旧賃借人の署名欄の直下に「上記は、●●(旧賃借人)の意思に基づくものであることを表明し、保証する」と記載し、新賃借人が署名・押印する

対策2
文書の末尾に立会人として不動産会社の代表者が「本書が、●●(旧賃借人)の意思に基づくものであることを、立会人として、表明し、保証する」と記載し、署名・押印を行う

その上で、不動産会社がもってきた契約書を確認したところ、もともとの契約書と今回の契約に関わる書類において、氏名欄に、旧常用漢字・常用漢字の違いがあることがわかりました。

もともとの契約書では、旧賃借人の記名欄に「旧常用漢字」が使用されています。

今回の契約に関わる旧賃借人・新賃借人・保証人は、親子関係で全員苗字が同じなのですが、名前にはすべて「常用漢字」を使用しています。

質問です。

1 今回の契約書において、旧賃借人の名前も「常用漢字」で記載して問題はないでしょうか?

2 もともとの契約書に合わせて、旧賃借人の名前だけ「旧常用漢字」にする必要があるのでしょうか?

3 なお、不動産会社によると、パソコンで旧常用漢字が出てこないため、対応に悩んでいると、言っています。

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

「常用漢字を使おうが、旧常用漢字を使おうが、どちらでも差し支えない」
ということになります。

住所と氏名の両要素で本人特定しますので。

同じ住所に●●●(旧常用漢字)と◎◎◎(常用漢字)の2名いれば大変ですが、特定の個人をさすことは明らかです。

在日外国人の中には、何十回、何百回と契約を重ねても、本名を名乗らずに通名(ペンネーム)で契約を行う方がいます。

しかし、その場合でも契約が無効になることはありません。

たとえば、歌手の「松田聖子」さんとの契約を考えてみてください。

本名の「蒲池法子」でサインしても、芸名の「松田聖子」でサインしても、それだけで契約が無効になることはありません。

同じく、契約の成立には
「意思表示の合致」
が最も重要であり、その痕跡さえ確かであれば問題ないのです。

つまり、
“「松田聖子こと蒲池法子」という、該当する住所に住むただ一人の日本人がその意思表示を示した”
という痕跡が揺るぎない限り、契約内容の有効性は保持されるのです。

正式には、

「●●●(旧常用漢字)こと◎◎◎(常用漢字)   ◎◎◎(常用漢字)<印>」

が確実だと思います。

著:畑中鐵丸

00182_ケーススタディ_高齢賃借人に関する契約変更手続きの対応方法

<事例/質問>

アパートを経営しています。

不動産会社から
「賃借人が高齢のため、賃借人および保証人の変更契約が必要」
との連絡がありました。

署名の真正性や法的効果の強度については00181で、以下のように教えていただき、理解しました。

(1)自署+実印(印鑑証明付きの登録印)
(2)記名(名前印刷)+実印
(3)自署+契約印と同じ認め印(登録されていない三文判)
(4)自署+契約印と異なる認め印
(5)記名+契約印と同じ認め印

ただし、(1)や(2)が不可能な場合、不動産会社の協力を得て進める方法はありますでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

署名や印鑑の種類が法的効力に影響を及ぼすため、法的効果の強い順に推奨される手順を整理します。

まず、一般的には
「(1)自署+実印」

「(2)記名+実印」
を用いると法的効力が高くなりますが、旧賃借人の実印が用意できない場合には、不動産会社の協力を得ることで契約書類の信頼性を補強することが可能です。

以下に具体的な方法を、強度の高い順に記載します。

対策のポイントと強度順

1 最も強度の高い対策(A案)

・「土地保有者及び賃貸人名義変更通知書」や、「連帯保証人変更に関する覚書」(債権債務清算条項を効かせること(これが最重要となる))を作成し、旧賃借人の署名欄の直下に「上記は、●●(旧賃借人)の意思に基づくものであることを表明し、保証する」という文言を新賃借人が記入し、署名・押印します。

・また、文書の末尾に立会人として不動産会社の代表者が署名・押印を行い、「本書が、●●(旧賃借人)の意思に基づくものであることを、立会人として、表明し、保証する」と記載します。

これにより、新賃借人と不動産会社が双方で旧賃借人の意思を保証する形となり、実印が用いられなくても、法的信頼性が高まります。

2 次に強い対策(B案)

・旧賃借人の署名欄の直下に「上記は、●●(旧賃借人)の意思に基づくものであることを表明し、保証する」と新賃借人が記入し、署名・押印する方法です。

・A案と異なり、不動産会社の立会いがないため強度はやや落ちますが、旧賃借人の意思が確認されたことを示すことで一定の信頼性を確保できます。

3 立会人のみの保証(C案)

・旧賃借人の署名欄に保証文言は入れず、立会人として不動産会社の代表者が文書の末尾に署名・押印を行い、「本書が、●●(旧賃借人)の意思に基づくものであることを、立会人として、表明し、保証する」との記載を加えます。

・これは新賃借人による保証がないため、信頼性はA案、B案に比べてやや低くなります。

4 最低限の対応(D案)

・特段の追加措置や記載を加えず、旧賃借人の押印のみで進める方法です。

信頼性が低くなり、後日の紛争リスクが高まるため、他の選択肢が難しい場合のみに限られます。

補足

旧賃借人が実印を用いなくても、不動産会社が立会人として契約に関与することで、宅建業者としての立場から一定の信頼性が認められることがあります。

著:畑中鐵丸

00181_ケーススタディ_契約署名の法的効果と変更契約の注意点について

<事例/質問>

アパートを経営しています。

不動産会社から、
「賃借人が高齢のため、賃借人および保証人の変更契約が必要」
という連絡がありました。

旧賃借人のサインが取りにくいとのことで、当初の契約は
「サイン+印鑑」
でしたが、更新契約では
「名前の印刷+印鑑」
にしており、今回の賃借人変更通知書および保証人変更契約でも
「名前印刷+印鑑」
にする提案を受けています。

当初の打ち合わせ通り、実印と印鑑証明の提出をお願いしたのですが、もし本人のサインがない場合、原契約の印鑑のみで契約することは、やはり法的効果が弱いでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

不動産の賃貸契約や保証人の変更契約において、署名の形式や印鑑の種類は法的効果に影響を与える重要なポイントです。

署名の真正性や法的効果の強度について理解しておくと、契約を交わす際の判断材料になるでしょう。

契約署名の法的効果の強さは以下の順序で分かれます。

 自署+実印(印鑑証明付きの登録印)
自署と実印の組み合わせは、署名の真正性を証明する最も強力な方法です。
自署とは本人が直接サインすることを指し、実印は役所に登録された公的な印鑑です。
この組み合わせでは、契約書に対する本人確認が確実に行われているため、第三者からの信頼性も高く、法的効力が非常に強くなります。

 記名(名前印刷)+実印
自署ではなく名前の印刷に実印を組み合わせた場合です。
記名のみでは本人が直接契約意思を示した証拠が弱くなる可能性がありますが、実印を使用することである程度の法的効果が確保されます。
ただし、自署に比べると真正性はやや劣るとされます。

 自署+契約印と同じ認め印(登録されていない三文判)
実印ではなく、認め印で契約する場合です。
認め印は法的には一定の効果を持ちますが、偽造や不正のリスクがやや高まるため、実印ほどの信頼性はありません。
しかし、自署があることで本人の意思は確認されているため、一定の効力が認められます。

 自署+契約印と異なる認め印
自署があっても契約時に押印された印鑑と異なる印鑑を使用すると、契約書の真正性が疑われる場合があります。
契約印と異なる認め印は、本人確認や契約意思の確認が十分に行われたとは限らないため、法的効果はかなり弱まることになります。

 記名+契約印と同じ認め印
本人が署名せず、記名(名前印刷)と契約時の認め印のみの場合です。
この場合は法的効果が最も弱く、第三者による署名の不正や意思確認が曖昧になりやすい点で注意が必要です。

以上の順序から分かるように、
「記名+認め印」
の組み合わせは、法的には最も弱いものとなります。

もし賃借人が高齢で自署が難しい場合でも、契約の法的効果を確実にするためには、少なくとも
「記名+実印」
に加えて印鑑証明の提示を求めるとよいでしょう。

著:畑中鐵丸

00180_ケーススタディ:ケンカのお作法_マンション共有部分のガラス交換

<事例/質問>

マンションのバルコニーのガラスを、曇りガラスから透明ガラスに交換したところ、管理会社より電話で次のようなコメントを受けました。

「共用部分であるバルコニーのガラスが、曇りガラスから透明ガラスに変更されています。他の住民とのバランスを考慮し、元の曇りガラスに戻してください」

この指摘に対し、私は
「バルコニーを共用部分とは認識しておらず、精神衛生上の理由で交換した」
と伝えました。

また、同様の変更を希望する他の住民の存在を伝え、
「住民全体の意見をアンケートで集めてはどうですか」
と提案しました。

このような場合、どのように対応すべきだったでしょうか?

<鐵丸先生の回答/コメント/助言/指南>

1 「知らなかった」を主張する

ルール違反であると指摘されても、まずは
「共用部分であることは知らなかった」
と、真顔ですっとぼける。

透明ガラスに変えたのは、前向き精神衛生上の配慮であり
「自分こそが正義だ」
と強弁する。

強弁も百回唱えると正義になる。

2 管理会社からの正式な文書を要求する

仮に管理会社から指示や要求があっても、口頭での指摘には応じず、
「そんな重大なこと、イージーでカジュアルなスタイルでは困ります。
命令なのか、要望なのか、愚痴なのか、わからないし、根拠があるかどうかも、わからない。
その訳、その理由、その背景、無視した場合にどんな厄災がふりかかるのか、きちんと書いたもので貰わないと、困ります。
文書の責任者の明示を含め、もし、書いた内容に間違った場合に、誰がサンドバッグになって、私のケンカを買ってくれるのか、そこも含めて、文書でくださいね」

というのが正しいケンカの作法です。

とはいえ、どんなに激しいケンカをしても、最後は、
「妥協と和解」
で収まるものですので、嫌味をぶっぱなしつつも、落とし所を探りつつ、温和に落ち着かせる努力を並行して進めましょう。

著:畑中鐵丸

00179_相続_弁護士に法的ジャッジの支援を依頼する背景

相続について、弁護士に法的ジャッジの支援を依頼する方が絶えないのは、相続案件が争族案件に移行することが多いためです。

すなわち、相続にまつわる
「“法的論理リスク”の確認」
「資料の解析評価と最終結論のミエル化・カタチ化・言語化・文書化」
をプロに任せる方は少なくありません。

たとえば、連帯保証債務調査は、信用保証協会に限定していえば、単なるコミュニケーション課題です。

端的に言えば、
「わからないときは、聞けばいいだけ」
のことです。

しかし、
「人にものを尋ねる」
ということであっても、
「文書で」
となると、”超絶難しい”とされます。

「意思内容を文章で表現する」
だけで、“数日”ではなく“数週間”を要する人もいるほどです。

そのうえ、発出した文書に対しては、相手方からすぐに回答を得られるわけではなく、放置されたり、何度も突き返される等で
「相手と意思疎通を図れない」
のが現実です。

そのコミュニケーションはいつかは成立するでしょうが、そこに至るまでの“時間”と“機会”は、想像を絶するレベルでしょう。

ここに、専門家(弁護士)の介入契機が生まれます。

要するに、相続人が被相続人の子供であることを戸籍等で証明し、かつ、連帯保証の存否・範囲・額を照会するという意思内容についてミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化を、弁護士が支援するということです。

尚、当然のことながら、依頼者への見積書提出や、その前提としての状況の収集・整理・観察・認知・評価といった各知的作業については、費用が発生します(これら知的作業は”法律相談”と呼ばれることもあります)。

著:畑中鐵丸