00114_「ベンチャー企業経営者が陥りがちなビジネス・マネー・人生全般における失敗」の傾向と対策_9_聴講者からの質問その1_中小企業の海外M&Aについて成功例をご教示いただきたい

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本コンテンツシリーズは、アジア経営者連合会「ALA経営塾」主催にて、令和3(2021)年3月25日(木)17時30分開始にて行われました、弁護士畑中鐵丸の講演「組織と個人の用心棒、顧問弁護士の使い倒し方・ベンチャー企業経営者特有の失敗の傾向と対策~ベンチャー企業経営者なら皆さん身に覚えがあるビジネスやプライベイトの失敗事例と対策のための”あの手・この手・奥の手”を25年超のキャリアをもつベンチャー弁護士が直接伝授します~」の講演レジュメ及び講演録から編集したものです。なお、本講演内容は、筆者(講師)独自の見解であり、所属組織及びアジア経営者連合会ないしALA経営塾のものとは一切関係ありません。
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中小企業のほとんどは、海外M&Aで成功していません。というより、死屍累々といった感があるほど、ことごとく失敗しています。

その失敗の傾向や原因については、

企業法務部員として知っておくべき海外進出プロジェクト1~2

企業法務部員として知っておくべき海外進出プロジェクト3~12

にまとめています。

一部、引用し、転載しておきます。

引用開始==================>
まず、そもそも、なぜ、中国やその他アジア各国に進出するのでしょうか?
その経済的意味はどこにあるのでしょうか?
ここで、倫理や道徳や綺麗事を捨象して、シビれるくらい、シビアに、純経済的に、合理的に目的考察をしてみます。
「アジア進出の動機として、生産拠点を日本からアジアにシフトする、ということを考える企業」
においては、アジア進出のメリットは、ずばり、
「低賃金」
です。
すなわち、
「現地の方を安い給料で、コキ使えるから」
というのが進出の理由として推定されます。
だからこそ、
「最近は中国の人件費が高くなったからベトナムがいいぞ」
「いや、ベトナムも高いから、ミャンマーとかカンボジアだぞ」
といった、話が聞こえてくるのです。
要するに、生産拠点をシフトする形で中国に進出する企業は、別に、
中国が好きとか、
民間レベルの日中友好を進めたいとか、
本場の中国料理が好きとか、
中国の方々が大好きとか、
4000年の歴史に敬意を感じたから、
といった動機ないし目的ではなく、その真の目的は、
「(日本人とくらべて相対的に)安くて、コキ使える無尽蔵の労働力がある」
と考えて、進出するのです。
だから、中国より安いところがあると、経済的判断において、
当該「さらに安い人件費」
を求めて、進出先を変更したりするのです。
かつて、植民地支配の時代に、欧米列強が、(当時の彼らからみて)劣等民族であった現地人を、奴隷労働力(植民地時代の欧米列強の一般的認識としてです)として廉価に活用できるから、という理由で、アジアアフリカ諸国や中南米において生産活動を行っていたことがありました。
生産拠点を日本からアジアにシフトすることを目的とする企業の進出動機は、
「倫理や綺麗事を捨象した、純経済な観察における目的」
として考察すれば、要するに、これと同様であり、現地の人的資源を経済的に有利な条件において生産資源として活用したい(からアジアに進出する)、というのが、その目的ないし真の動機として捉えられます。
また、別の企業は、進出するアジアの国を、自社の商品を消費してくれる巨大市場とみて、進出するところがあるかもしれません。
この点についても、かつて、植民地支配の時代に、主に商品を販売することを企図した欧米列強の企業がアジア各国に進出したケースと同様、(当時の彼らからみて)文明レベルの劣る民族に対して、
「現地では作れない、現地の方の消費欲求を掻き立てる圧倒的な価値と希少性を有する商品・サービス」
を提供することによって、母国では考えられないほど容易に、市場争奪や市場支配が可能だったからです。
現代の日本で、販売拠点をアジアに設けることを目的とする企業の進出動機も、建前や倫理・道徳を一切捨象して純経済的に突き詰めれば、これと同様、母国とくらべて有利な競争環境を求めて効率的に稼ぎたい(からアジアに進出する)、というのが、その目的ないし真の動機として捉えられます。
無論、アジアに進出する企業は、こんな
「時代錯誤も甚だしい下劣な言い方」
で、その動機や目的を語ることはなく、綺麗事や建前として、ジェントルでエレガントに響く進出目的(相互互恵による国際的な協調、対等な真のパートナシップによる相互発展など)を騙り、ディスインフォメーション(情報偽装)します。
「この種の韜晦を、いけしゃあしゃあとカマし、実際の目的ないし動機は、植民地時代の欧米列強の企業のものと同様のものを強固に持ち、これを、SMART基準に落とし込んで、部下に的確な指示を出し、シビアに当該目的を達成する」
という企業は、まず、間違いなく進出に成功します。
他方で、本音と建前がよくわからない状況で頭脳の中でカオスとなっている(さらにいえば、「国際進出をした国際的な企業の国際的な社長さん」とみられたい、などというくだらない意地や見栄のため、進出自体が自己目的化しているような)企業については、アジア進出の目的を見失い、確実に失敗します。
<==================引用終了

引用開始==================>
まず、
「海外進出を任せるに足るリーダー(責任者)」
のスペックを議論する前提として、当該リーダー(責任者)をタスクデザインを明らかにする必要があります。
(「海外の国や人々や各団体と仲良くなって、国際交流する」などといった活動とは真逆の、)「国内事業展開より数倍、数十倍困難な海外進出を経済的に成功させる」
ためのタスクを、(四半世紀ほどにしかならない私の拙い実務家経験を基礎に)合理的に設計してみますと、

1 現地の人間になめられないような制度やカルチャーを現地法人に浸透させ、確立する
2 強烈な強制の契機をはらんだ圧倒的なオーラを醸し出し、徹底して高圧的な支配を実行する(とはいえ、植民地時代ではないので、支配的な要素はおくびにも出さないように努め、極めてジェントルかつエレガントに、スマートな形で実効的支配を展開する)
3 俗悪・無作法・怠惰を許さない、徹底した管理を敷く。
4 客観的基準と合理的観察によるエゲつない能力差別を行ない、論功行賞を明確に実施し、ルール違反者に対する過酷な懲罰を徹底して行う
5 独禁法を愚弄する精神で、競争者の存在を否定し、あるいは新規参入の目を容赦なく摘む形で、市場を迅速かつ圧倒的に支配する(つもりで頑張る。実際は法令には触れないように細心の注意を払う)。
6 このような市場支配(を目指した、法に触れない経済活動)を、大量のカネ、物量を背景に、高圧的に、スピーディーに、SMART基準にしたがって、効率性を徹底追求して行う

というものになろうかと考えられます(もちろん、コンプライアンスは無視ないし軽視できませんので、諸外国の法令を含めたあらゆる法令に違反ないし抵触しないよう、細心の注意を払うべきことは大前提となります)

(中略)

敷衍しますと、
「海外進出を任せることのできるリーダー(責任者)」
の人材イメージとしては、
1 「海外進出を経済的に成功させるために必要となる、いずれも極めて達成困難な、各タスク」 を、命を賭して、完全に成し遂げる強靭な意志と、
2 これら各タスクを、一定の冗長性(リスクや想定外に常に対応しうるための時間的・経済的・精神的冗長性)を確保しつつ、涼しい顔をして、平然かつ冷静にやり抜けるだけの知識・経験・スキルと、
3 「成功時に得られる、鼻血が飛び出るくらい、旨味があるインセンティブ」を設計して、臆面もなく要求するだけの豪胆さと、当該インセンティブに対する健全な欲望と、
4 声一つ発することなく、被支配者が自然とひれ伏す強烈なオーラと、
5 悪魔の手先のような性根と、
6 遂行しているタスクの毒々しさを全く感じさせることなく、常に、ジェントルかつエレガントに振る舞える典雅さ、
といった各スペックを漏れなく実装した人材、ということになろうかと考えられます。

上記の
「海外進出を任せることのできるリーダー(責任者)」
の人材イメージって、皆さんに、どこかでみたような、そんな既視感が生じませんでしたでしょうか。

すなわち、上記の
「海外進出を任せることのできるリーダー(責任者)」
の人材イメージを受けて、皆さんにおいては、
「これって、まるで、東京でたまにみかける、『日本人を蔑視して、舐め腐っていて、死ぬほど高額の給料をもらって、唖然とするくらいいい暮らしをしていて、クソ忌々(いまいま)しい、反吐が出るほど、イヤ~な感じの、外資系企業の幹部』そのものじゃないか!」
といった感じを抱かれたのではないでしょうか。

そして、そういう
「東京でたまにみかける、『日本人を蔑視して、舐め腐っていて、死ぬほど高額の給料をもらって、唖然とするくらいいい暮らしをしていて、クソ忌々(いまいま)しい、反吐が出るほど、イヤ~な感じの、外資系企業の幹部』」
によって経営されている外資系企業は、どの企業も、順調に儲かっているのではないでしょうか。

こういう言い方をすれば、帰納的に理解・納得いただけるのではないか、と思います。
<==================引用終了

著:畑中鐵丸

00113_「ベンチャー企業経営者が陥りがちなビジネス・マネー・人生全般における失敗」の傾向と対策_8_「人生」という「プロジェクト」を、より良き方向に改善し、ありうべきリスクを逓減させる方向で、制御(マネジ)するために_リテラシーの力で解決

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本コンテンツシリーズは、アジア経営者連合会「ALA経営塾」主催にて、令和3(2021)年3月25日(木)17時30分開始にて行われました、弁護士畑中鐵丸の講演「組織と個人の用心棒、顧問弁護士の使い倒し方・ベンチャー企業経営者特有の失敗の傾向と対策~ベンチャー企業経営者なら皆さん身に覚えがあるビジネスやプライベイトの失敗事例と対策のための”あの手・この手・奥の手”を25年超のキャリアをもつベンチャー弁護士が直接伝授します~」の講演レジュメ及び講演録から編集したものです。なお、本講演内容は、筆者(講師)独自の見解であり、所属組織及びアジア経営者連合会ないしALA経営塾のものとは一切関係ありません。
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1、拙著「ヤヴァイ会社の死亡フラグ10」で学ぶ

拙著「ヤヴァイ会社の死亡フラグ10」では、「ベンチャー企業経営者失敗あるある」がたくさん書かれていますが、そこでは、
【ビジネス(仕事)】のアップグレード、
【ビジネス(仕事)】のセキュリティ、
【財産(マネー)】のアップグレード、
【財産(マネー)】のセキュリティ(保険、節税、投資詐欺、金融破綻、仮想通貨流出等)
について、リテラシー形成に役立つようなヒントが書かれています。

2、拙著(但し、監修)「融資地獄」で学ぶ

拙著(但し、監修)「融資地獄では、特に、第4章以下において、
【ビジネス(仕事)】のセキュリティ
課題として、借金まみれになった場合の「危機脱出ノウハウ」が多数書かれています。

3、畑中鐵丸アーカイブスで学ぶ

畑中鐵丸アーカイブスは、
本サイトのご紹介で述べましたとおり、

地に足をつけて、現実的で具体的に「笑いが止まらないくらい、楽しく、憂いなき人生を送る」を実現するためには、【ビジネス(仕事)】、【財産(マネー)】、【健康】、【暮らし】及び【子供】といった各分解された要素分野において、それぞれアップグレードに努め、セキュリティを万全にしていけば、結果として、「豊かな人生を、楽しく憂いなく送れる」ということにつながります。

こういう観点から、

・【ビジネス(仕事)】のアップグレード(商品やサービスの改善・開発、事業拡大、新規事業創出、海外進出、株式公開、M&A等)
・【ビジネス(仕事)】のセキュリティ(法務強化、ガバナンス、コンプライアンス、契約処理、争訟対応、労務問題、税務問題等)

・【財産(マネー)】のアップグレード(株式投資、投資信託、不動産投資・REIT、先物・FX、新興国投資等)
・【財産(マネー)】のセキュリティ(保険、節税、投資詐欺、金融破綻、仮想通貨流出等)

・【健康】のアップグレード(アンチエイジング、ダイエット、体幹トレーニング、レーシック、AGA等)
・【健康】のセキュリティ(がん、脳梗塞・心筋梗塞、糖尿病、緑内障・白内障、動脈瘤等)

・【暮らし】のアップグレード(不動産、海外旅行、高級ホテル、美食、ショッピング、社交・嗜み・趣味、会員制クラブ等)
・【暮らし】のセキュリティ(相続紛争、離婚紛争、親族間不和、隣人紛争、事件・事故、SNS炎上、デマや噂の被害、名誉毀損等)

・【子供】のアップグレード(幼小お受験、中学・高校受験、大学受験、大学院受験、留学、就職、資格取得等)
・【子供】のセキュリティ(いじめ被害、いじめ加害、悪友との関係処理、問題教師、通学セキュリティ、学校事故、課外活動・スポーツ事故、事件・事故被害、ひきこもり、成績不振・学習意欲減退等)

といった形でテーマを分類して設定し、各テーマに沿う形で、畑中鐵丸がこれまで著した著作や評論や随想や雑文の全てを整理し、公開する目的でこのサイトを開設しました。

お金持ちや小金持ち、あるいはこれらを目指す野心家の方々にとって、本当に役に立つ、
「志は低いが、シビれるくらい役に立つ、インスパイヤリングな処世訓や知見や警句」
を発信し続けたいと考えています。

と書きましたとおり、上記各カテゴリーにおける人生の目的設計や課題発見、さらに、目的達成や課題対処のためのヒントを述べています。

一例を挙げますと、

離婚が頭によぎったら、まずは読んでおくべき「離婚にまつわる迷信・都市伝説」シリーズ

4、その他

1)「仕事や人生や社会生活において本当に大切なこと」は本に書いていないし、学校でも教えてくれない

世の中、
「身過ぎ世過ぎ」
のために本当に大切なことほど本や新聞に書いていないし、テレビでも放送しない。

学校の先生や親も教えてくれない。

というか、
「『身過ぎ世過ぎ』のために本当に大切なこと」
を学校の先生やサラリーマンや専業主婦をやっている親は知らない。

そういうことを知っているなら、教師やサラリーマンや専業主婦などではなく、もっと別の人生を歩んでいるはず。

「世の中で、本当に大事なこと」
がほんの少し、手がかりのようなことが、たまに本に書いてあることもあるかもしれないが、腹が立つくらいわかりにくくしか書いていない。

2)「人生や仕事の『切所(せっしょ)』」で役に立つのは、「キレイゴト」ではなく「リアリティ」

「仕事や人生の大事な局面」
で、
「常識や、学校の先生や親に教えられたことや、テレビや新聞で言っていること」
にしたがうと、たいてい失敗する。

「常識や、学校の先生や親に教えられたことや、テレビや新聞で言っていること」
は理想であり、キレイゴトであり、耳障りはいいが、役に立たない。

「仕事や人生の大事な局面」
は、
「キレイゴトではどうにもならない、圧倒的な現実」
が大きく立ちはだかり、
「ルール軽視の何でもあり」
の状況において、
「あの手、この手」だけでなく、「奥の手」、さらには(机上戦略における想定として)「禁じ手」も、また、「裏技、寝技、小技」に加え、(机上戦略における想定として)「反則技」も
捻り出し、あるいは想定しながら
死にものぐるいで生き残るような場面。

「会社や仕事の大事な局面」
では、
「陳腐な常識」

「リアリティの乏しいキレイゴト」
が通用しないし、常識やキレイゴトにしたがった処理をしたら、たいてい無残に失敗し、ピンチに陥る。
ピンチはチャンスになどならず、大ピンチになり、大ピンチは当然のように破滅に移行する。

常識とは、物心つくまでに身につけた偏見のコレクションであって、戦理とは真逆の有害な誤謬であることが多く、窮地に陥るのも、当然といえば当然。

3)「ピンチはチャンスに」なんて絶対ならない

失敗したら、ピンチになったら、ピンチは決してチャンスになどならない。

「ピンチ」

「大ピンチ」になり、
「大ピンチ」

「破滅」になるだけ。

ピンチになったら、敗北は必至・所与とし、とっととダメージコントロール(損害軽減措置)の検討を始め、素早く果断に実行するのが優れた実務家。

4)バカほど「一発逆転」を信じる

現実の社会においては、
「一発逆転」
というのはない。

ほぼ無い、というか、まったく無い。

特に、仕事や人生の切所において、
「一発逆転」
は、絶対無い。

たまに、
「大事が小事に、小事が無事になり、無事になって元に戻る」
という僥倖に恵まれることがあるだけ。

そして、
「大事を小事に、小事を無事にし、無事になってデフォルトの状態に回帰させる」
程度の成果を挙げるために、途方も無い時間とコストとエネルギーを費やし、かつ、辟易するくらい真面目に取り組まないといけない。

「会社のお金を使い込んでしまい、損失を回復しようとして、先物に手を出す」
という
「一発逆転策」
や、
「粉飾を誤魔化すために、さらに、大掛かりな架空取引をでっち上げる」
という
「一発逆転策」
など、
「危機打開のために、考え出された、創造性豊かな一発逆転策」
なるものは、そのほとんどが、単なる法令違反や犯罪行為(しかも、よりスケールアップした別途の法令違反や犯罪行為)であったりする。

5)「字を読めること」と、「紙背まで読み取ること」とは別

弁護士その他の専門家は、
「字を読む」プロ
かもしれないが、
「字を読めること」
と、
「紙背まで読み取ること」
とは別。

字を読めても、紙背が読めない、といった手合もいる。

憲法14条は、法の下の平等を保障している。

紙背を読めば、
「法の下の平等は保障するが、逆に言えば、経済的不平等を容認している」
ということ。

これは、単なる言葉遊びやレトリックではない。

紙背にこそ、絶対的本質が書かれている。

「経済的平等」

「結果の平等」
を徹底して志向した、かつてのソビエト連邦は、国家規模で破綻した。

我が国や西側先進諸国は、
「経済的不平等」
を、断固として、徹底的に、容認し、保障し、死守してきたし、今後もそうする。

憲法14条が体制として保障する国家の姿は、紙背にこそ、その本質が描かれている。

これが、紙背を読む、という意味。

そして、こんなことは、法学部で習わないし、司法試験でも聞かれないし、司法研修所でも習わないし、一般の法律家もよく判っていない。

知っているのは、最高裁判事その他、一部のエスタブリッシュメントだけ。

6)「知性・知恵」と、「情報・データ」は別もの

「正確無比なデータ」

「詳細な情報」
よりも
「リテラシー」
が、
「瑣末な議論」
より
「大局」
「本質」
が、重要。

「記憶力」
すなわち
「データや情報の蓄積と効率的な検索という機能を実装して、誰が解いても正解が1つの自然科学上の命題・課題を間違いを犯すことなく、忘却せず、正確に、即座に解答する能力」
は今や無価値。

Googleやコンピューターといった記憶装置・演算処理装置は、確かに、便利。

原始人や未開の部族はさておき、スマホを持っていてGoogleで検索できるだけの人間を、ただ、スマホを持っていて検索できるから、といって
「記憶力のある物知り」
として尊敬したりしない。

クイズ東大王も、テレビで観ていて暇つぶしにはなるが、人生や仕事の大事、会社の生き死にに関わる大事を相談しようとも思わない。

ハサミは便利だが、ハサミを尊敬するバカはいない。

「問題を見出し、問題を設定し、課題を創出できた上で、Googleの特性を理解し、Googleを活用して、問題解決手法を生み出したり、それを金儲けに利用したりする人間」
は知性があり、価値がある。

大事なもの・重要なもの・価値あるものは、
「記憶力に長けた試験秀才や物知り」
ではなく、
「メタ認知(自己客観視・俯瞰視)が出来、問題を発見・特定し、問題を解決して、価値を創造できる」
ような本質的知性や根源的スキルを実装した人間。

「覚えること、記憶すること」

「正解がある問題で、正解を正確に答えること」
は、人生やビジネスや企業の問題解決能力としては、ほぼ無意味で無価値。

分厚い法律書をみても、個別具体的な企業活動や取引において法的課題を抽出する方法は、そこに書いていない。

当然ながら、分厚い法律書を正確に記憶した法律バカに、目の前の課題対処を聞いても、何も答えられない。

株主から提訴要求通知が内容証明郵便で突如送られてきてパニックに陥った企業が、
「会社法で『優』を取った法学部の学生」
に、
「こんなの来たんだけど、任せるから何とかして」
と言って対処をお願いした場合、どうなるだろうか?

この
「試験秀才の21歳の学生」
は、戦略的・効果的に対処して、企業を救うことが出来るだろうか?
それとも、歯が立たず呆然とするだけだろうか?

7)知性とは懐疑能力・創造的であり、実務知性とは結果を出せるまで合理的試行錯誤やゲームチェンジを継続する執着心と同義

知性とは、懐疑する知的能力や想像する知的能力のことであり、問題を予知し、問題を発見し、問題を特定・具体化し、展開予測をし、ストレステストを実施する能力を指す。

東大の二次試験は、この文脈の知性を試している。

東大に合格する人間は、予測をし、想像し、予測されたリスクに対して、準備をし、手当をしておく。

平たく言えば、「ヤマを張」っている。

ただ、東大に合格する人間の場合、「張るヤマ」の範囲が、膨大で、粗漏が皆無。

だから、合格する。

当然のように合格するのである。

また、実務的知性とは、
「あの手・この手・奥の手・(机上想定としての)禁じ手・裏技・寝技・小技・(机上想定としての)反則技」
を捻り出し、あるいは想定し、ゲームチェンジを含めた合理的試行錯誤を構築・遂行し続け、
「何とかする」
「結果を出す」
まで往生際悪く執着するために働かせる知的能力や精神作用である。

8)リスク管理の肝は、リスクの発見・特定

企業法務とはリスク管理。

リスク管理で一番重要なことはリスクの発見と特定。

ほとんどの企業はリスクの特定はおろか、発見すらできていないし、楽観バイアスや正常性バイアスに罹患し、気付いてすらいない。

日本企業のほとんどは、課題抽出が圧倒的に出来ていないので、課題対処のはるか以前の段階で、躓いているのが現状。

9)「生兵法“務”」は大怪我のもと

「生兵法“務”」は大怪我のもと。

迷ったら聞く。

迷ったら聞ける環境を作っておく。

但し、聞く相手と聞く内容と聞き方を間違えないこと。

法務の失敗は、自分が出来ると思って自分の常識で処理して失敗するか、知識も経験も能力もない人間に頼って失敗するか、のいずれかがほとんど。

10)他人も、自分も、信じない

人間関係であれ、組織間の関係であれ、国家間の外交関係であれ、
「正しい関係」
「ありうべき関係」
構築に最も重要なことは、
「相手をとことん信用しないこと」。

上司であれ、社長であれ、弁護士であれ、裁判官であれ、学者であれ、親であれ、友達であれ、身内であれ、他人はすべて信じない。

自分以外の他人は一切信じず、他者の悪意を予測しつつ、他者の愚考や愚行を想定しつつ、睨み返されても不愉快な予測や想定を披瀝し、これに対する備えを提案し、後で行う喧嘩を先にやっておく。

最初に「目先の波風」
を立てておかないと、後から大津波に襲われる。

さらにいえば、最も優れた人間は、自分自身ですら信じない

11)「創造的な仕事」をするためには、「陳腐な形式や退屈なモラルやくだらない常識」は邪魔、すごく邪魔、非常に邪魔、迷惑なほど邪魔

大きなビジネスや新規のプロジェクトは、フツーのことをフツーにやっていては成功などしない。

トラブルや想定外の連続の事柄が次々生じる。

例外事象の対処には、常識や良識やモラルや過去の成功体験は一切通用しない。

学校で習ったり、親から教えられた、キレイゴトや理想論も通用しない。

というか、圧倒的な現実に立ち向かうには、キレイゴトや理想論に従うと、却って死期を早めるだけ。

「世間で評価される仕事というのは、あらゆる形式やモラルを排して遂行されているもの」
である。

12)さらにさらに

さらに、興味があれば、畑中鐵丸が執筆したシリーズコンテンツ
苛酷な社会を生き抜くための「正しい非常識」
が参考になる(かもしれないし、ならないかもしれない)。

著:畑中鐵丸

00112_「ベンチャー企業経営者が陥りがちなビジネス・マネー・人生全般における失敗」の傾向と対策_7_「人生」という「プロジェクト」を、より良き方向に改善し、ありうべきリスクを逓減させる方向で、制御(マネジ)するために_カネの力で解決

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本コンテンツシリーズは、アジア経営者連合会「ALA経営塾」主催にて、令和3(2021)年3月25日(木)17時30分開始にて行われました、弁護士畑中鐵丸の講演「組織と個人の用心棒、顧問弁護士の使い倒し方・ベンチャー企業経営者特有の失敗の傾向と対策~ベンチャー企業経営者なら皆さん身に覚えがあるビジネスやプライベイトの失敗事例と対策のための”あの手・この手・奥の手”を25年超のキャリアをもつベンチャー弁護士が直接伝授します~」の講演レジュメ及び講演録から編集したものです。なお、本講演内容は、筆者(講師)独自の見解であり、所属組織及びアジア経営者連合会ないしALA経営塾のものとは一切関係ありません。
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私などは、部下や後輩などに、「千里の道はジェット機で(制作/著作:井藤公量弁護士)」といいます。

何事も知恵と努力で解決するのは、学生の間だけです。

社会に出たら、カネの力で、一瞬で解決すべきです。

特に、カネをもっていたら、カネで解決すべきです。

カネというのは、問題を解決するためにこそ使うべきですから。

問題を解決する際に、カネをケチるのは愚かです。

事故にあって緊急手術が必要な際、手術代を値切るようなアホな真似はおすすめしません。

もちろん、値切っても、外科医は、交渉に応じてくれるかもしれません。値切った費用で了解してくれるかもしれません。

ただ、その値切られた外科医が、本気を出してくれるかどうかは、わかりませんし、そんな危険な真似、絶対すべきではありません。

著:畑中鐵丸

00111_「ベンチャー企業経営者が陥りがちなビジネス・マネー・人生全般における失敗」の傾向と対策_6_「人生」という「プロジェクト」を、より良き方向に改善し、ありうべきリスクを逓減させる方向で、制御(マネジ)するために_因数分解的整理と対処TIPS

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本コンテンツシリーズは、アジア経営者連合会「ALA経営塾」主催にて、令和3(2021)年3月25日(木)17時30分開始にて行われました、弁護士畑中鐵丸の講演「組織と個人の用心棒、顧問弁護士の使い倒し方・ベンチャー企業経営者特有の失敗の傾向と対策~ベンチャー企業経営者なら皆さん身に覚えがあるビジネスやプライベイトの失敗事例と対策のための”あの手・この手・奥の手”を25年超のキャリアをもつベンチャー弁護士が直接伝授します~」の講演レジュメ及び講演録から編集したものです。なお、本講演内容は、筆者(講師)独自の見解であり、所属組織及びアジア経営者連合会ないしALA経営塾のものとは一切関係ありません。
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人生における改善・発展のプロジェクトマネジメントや、リスクのマネジメントを行うために必要なことは何でしょうか?

それは、あったりまえのことですが、人生における、成長発展のゴールや課題やリスクを、漠然とした形ではなく、「しびれるくらいクリア」に認識することです。 

では、人生における、 成長発展のゴールや課題やリスクをどのように見つけていけばいいのでしょうか?

何をどのように改善し、どのようなリスクやしくじりを想定し、どのように備えれば、「笑いが止まらないくらい、楽しく、憂いなき人生を送る」ことが出来るのでしょうか?

【人生】=【ビジネス(仕事)】+【財産(マネー)】+【健康】+【暮らし】+【子供】
と要素分解されますから、
【ビジネス(仕事)】、
【財産(マネー)】、
【健康】、
【暮らし】及び
【子供】
といった各分解された要素分野において、それぞれアップグレードに努め、セキュリティを万全にしていけば、結果として、「豊かな人生を、楽しく憂いなく送れる」ということにつながります。

こういう観点から、

・【ビジネス(仕事)】のアップグレード(商品やサービスの改善・開発、事業拡大、新規事業創出、海外進出、株式公開、M&A等)
・【ビジネス(仕事)】のセキュリティ(法務強化、ガバナンス、コンプライアンス、契約処理、争訟対応、労務問題、税務問題等)

・【財産(マネー)】のアップグレード(株式投資、投資信託、不動産投資・REIT、先物・FX、新興国投資等)
・【財産(マネー)】のセキュリティ(保険、節税、投資詐欺、金融破綻、仮想通貨流出等)

・【健康】のアップグレード(アンチエイジング、ダイエット、体幹トレーニング、レーシック、AGA等)
・【健康】のセキュリティ(がん、脳梗塞・心筋梗塞、糖尿病、緑内障・白内障、動脈瘤等)

・【暮らし】のアップグレード(不動産、海外旅行、高級ホテル、美食、ショッピング、社交・嗜み・趣味、会員制クラブ等)
・【暮らし】のセキュリティ(相続紛争、離婚紛争、親族間不和、隣人紛争、事件・事故、SNS炎上、デマや噂の被害、名誉毀損等)

・【子供】のアップグレード(幼小お受験、中学・高校受験、大学受験、大学院受験、留学、就職、資格取得等)
・【子供】のセキュリティ(いじめ被害、いじめ加害、悪友との関係処理、問題教師、通学セキュリティ、学校事故、課外活動・スポーツ事故、事件・事故被害、ひきこもり、成績不振・学習意欲減退等)

といった形で、問題を分類・整理していき、それぞれの課題対処に知恵とスキルのあるプロや専門家のコネを作っておくことが推奨されます。

「知恵とスキルのあるプロや専門家」というのは、普通の専門家ではありません。

まず、問題の発見・特定やゴール設定が的確かつ迅速に出来る人間です。

特定の方法論について微に入り細を穿つばかりに詳しいだけではプロとしては不十分です。

クライアントや患者の不安や悩みを、願いや希望を、具体的な目標や、発見特定されたリスクや課題に迅速かつスマートに具体化出来る人間こそ、プロです。

そして、イマジネーションが豊かであることです。

定石を知っている、というだけではプロ失格です。

あの手、この手だけでも不十分です。

あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、反則技まで知っていて、それが経験に基づき実践できるスキルをもっていて、初めて、役に立つプロです。

もちろん、そういうプロは見つけることがなかなか難しいです。一生かけても見つけられないかも知れません。

その場合、プロを見つけるプロ(私などは、造語として、メタプロフェロショナルなどと呼称します)を探して、コネクションを保っておくことも必要です。

著:畑中鐵丸

00110_「ベンチャー企業経営者が陥りがちなビジネス・マネー・人生全般における失敗」の傾向と対策_5_ゴールデザイン、課題定義、プロジェクトの進め方について

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本コンテンツシリーズは、アジア経営者連合会「ALA経営塾」主催にて、令和3(2021)年3月25日(木)17時30分開始にて行われました、弁護士畑中鐵丸の講演「組織と個人の用心棒、顧問弁護士の使い倒し方・ベンチャー企業経営者特有の失敗の傾向と対策~ベンチャー企業経営者なら皆さん身に覚えがあるビジネスやプライベイトの失敗事例と対策のための”あの手・この手・奥の手”を25年超のキャリアをもつベンチャー弁護士が直接伝授します~」の講演レジュメ及び講演録から編集したものです。なお、本講演内容は、筆者(講師)独自の見解であり、所属組織及びアジア経営者連合会ないしALA経営塾のものとは一切関係ありません。
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1、ゴールデザインの手法

夢と目標は違います。

夢は妄想であり現実性がありません。

目標は、「S・M・A・R・T」の要素が含まれたものであるべきです。

すなわち、
”S”pecific(具体的)で、
”M”easurable(測定可能)で、
”A”chievableで、
”R”elated(悩みや課題を解消するものに関連)したもので、
”T”ime-bound(時間的な制約)が設定されたもの
でなければなりません。

2、課題定義の手法

リスクと不安も違います。

不安に駆られて闇雲に行動しても空回りして資源を消耗するだけです。

リスクは発見され、具体化され、特定され、明確に定義されるべきものです。

索敵の重要性を説く軍事上の格言として「見えない敵は討てない」というものがありますが、「発見され、具体化され、特定され、明瞭に定義されたリスク」を所与として、初めて、制御(マネジ)という営みを観念することが可能となります。

このプロセスを経由せず、方法論をかき集めて、何かに没頭して、闇雲に動き回っても、空回りであり、資源の無駄です。

3、プロジェクト・ロードマップ

不安やストレスを抱えたことを契機としてこれをロジカルに解決・改善するのは、以下のような段階をたどります。

不安やストレス(明瞭な言語化がされない、漠然としたもの)の段階

悩み(言語化された具体的なもの)の段階

目的設定や課題の発見・定義(論理と法則と現実性が加わったプロジェクトのターゲットとなったもの)の段階

目的達成・課題対処設計(展開予測と動員資源計画と役割分担や責任体制が整備されたもの)の段階

目的達成・課題対処実施(プロジェクトキックオフ)の段階、
という形です。

1)単なる、漠然として、実体が曖昧な「不安やストレス」から言語化された明確な「悩み」へ

不安やストレスの段階は、「言語化」されて、はじめて、悩みの段階にアップグレードします。

すなわち、

不安やストレス(明瞭な言語化がされない、漠然としたもの)の段階

+「言語化」

悩み(言語化された具体的なもの)の段階

という形で公式化されます。

2)「悩み」の段階から、「目的設定や課題の発見・定義」の段階へ

「悩み」の段階は、「(愚劣な情緒ではなく)論理的・現実的(現実的=予算動員前提の意味)解決志向と、冷徹な原因分析や、不愉快な展開予測やトレードオフシナリオの受容 」があって、はじめて、「目的設定や課題発見・定義」の段階にアップグレードします。

すなわち、

「悩み」の段階

+「(愚劣な情緒ではなく)論理的・現実的(現実的=予算動員前提の意味)解決志向と、冷徹な原因分析や、不愉快な展開予測やトレードオフシナリオの受容 」

「目的や課題発見・定義」の段階

という形で公式化されます。

3)「目的設定や課題発見・定義」の段階から「目的達成や課題対処設計(プロジェクト企画)の段階」へ

「目的設定や課題発見・定義」の段階は、「知性と経験とスキルといった知的資源(当該資源がなければ予算資源)」を動員してはじめて、「目的達成や課題対処設計(プロジェクト企画)」の段階にアップグレードします。

「目的設定や課題発見・定義」の段階

+「知性と経験とスキルといった知的資源(当該資源がなければ予算資源)」の動員

「目的達成や課題対処設計(プロジェクト企画)」の段階

という形で公式化されます。

4)「目的達成や課題対処設計(プロジェクト企画)」の段階から「目的達成や課題対処実施(プロジェクトキックオフ)」の段階へ

「目的達成や課題対処設計(プロジェクト企画)」の段階は、「遂行のための人的資源の調達・体制化・動員環境(予算)」が整備されてはじめて、課題対処実施(プロジェクトキックオフ)の段階にアップグレードします。

「目的達成や課題対処設計(プロジェクト企画)」の段階

+「遂行のための人的資源の調達・体制化・動員環境(予算)」の整備

「目的達成や課題対処実施(プロジェクトキックオフ)」の段階

と公式化されます。

4、経営者失敗あるある

経営者から、何やらプロジェクトらしきものがあって、これが「どうのこうの」「滑った、転んだ」云々(要するにうまく行っていない)、とおっしゃられる場合があります。

ただ、このような場合、ほとんどが、状況や課題や目指すべき目標そのものが、まともな言葉になっていない、「不安やストレス」の段階であり、もう少し、言語化する必要がある、という場合がほとんどです。

「悩み」として言語化され、プロジェクトオーナーとして、  「(愚劣な情緒ではなく)論理的・現実的(現実的=予算動員前提の意味)解決志向と、冷徹な原因分析や、不愉快な展開予測やトレードオフシナリオの受容」という態度決定があって、はじめて、「目的」や「課題」として認識されることになります。

しかし、経営者によっては、
・ 現実的(現実的=予算動員前提の意味)解決志向
・ 不愉快な展開予測
・ トレードオフシナリオ(改善のための行動を取ると、波風が立ったり、返り血を浴びる。骨を断つために肉を斬らせるような筋書き)
を嫌悪して、そこからなかなか先に進まず、茹でガエル状態になって、際限なき状況悪化を自ら招くパターンに陥ることもあります。

上記のような負の連鎖を断ち切るような成熟さと思考の現実性、予算資源に関する考え方(何でもかんでもケチればいい、というものではなく、現実的な予算策定をして、従前な稼働環境を整えるべき)の適正化が課題だったりします。

著:畑中鐵丸

00109_「ベンチャー企業経営者が陥りがちなビジネス・マネー・人生全般における失敗」の傾向と対策_4_何かを改善しようとしたり、何らかの課題を対処しようとして、闇雲に突き進む前に、やるべき大事なこと

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本コンテンツシリーズは、アジア経営者連合会「ALA経営塾」主催にて、令和3(2021)年3月25日(木)17時30分開始にて行われました、弁護士畑中鐵丸の講演「組織と個人の用心棒、顧問弁護士の使い倒し方・ベンチャー企業経営者特有の失敗の傾向と対策~ベンチャー企業経営者なら皆さん身に覚えがあるビジネスやプライベイトの失敗事例と対策のための”あの手・この手・奥の手”を25年超のキャリアをもつベンチャー弁護士が直接伝授します~」の講演レジュメ及び講演録から編集したものです。なお、本講演内容は、筆者(講師)独自の見解であり、所属組織及びアジア経営者連合会ないしALA経営塾のものとは一切関係ありません。
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「笑いが止まらないくらい、楽しい人生を送る」
「不安やストレスのない人生を送る」
という抽象的なことを思い描くだけでは、全く人生は変わりません。
闇雲に方法論を探し始めても、見つかりません。
努力をしたり、何かに没頭しても、同じです。

仕事に置き換えて考えてみれば簡単に理解できます。

何かを改善させたり、新しい何かを構築したりするプロジェクトマネジメントや、
リスクや課題に対処して問題を解決するプロジェクトマネジメント、
を任された、とします。
この種のプロジェクトの開始に際して、
「何から着手すべきか」、
と考えてみれば、わかります。

それは、あったりまえのことですが、
「成長発展のゴール(ゴールデザイン)」

「課題やリスクの発見・特定(課題の定義)」
です。

とはいえ、こんな簡単なこともおざなりにしておいて、やおら、無目的にプロジェクトに着手するような壮絶なアホもいるので、注意が必要です。

たとえば、ここに東大を強く志望する高校生がいたとします。

この高校生が、一生懸命、走り込みや、筋トレをやっています。

曰く、
「ボクは、小学校の先生からも、中学の先生からも、公務員をやっているお父さんからも、専業主婦としてパートで頑張っているお母さんからも、ボクが大好きで尊敬する、善良を絵に書いたようなみんなから、こういわれて育った。
『努力は尊い。努力はいつか報われる。失敗をおそれるな』と。だからこうやって、走り込みや筋トレをして、体を鍛え、誰にも負けない運動性能と体力を身に着け、東大に合格するんだ。こんなに、体力を鍛え、努力しているんだから、神様はきっと見放さない。いつか、ボクは東大に合格するはずだ」
と。

しかし、残念ながら、この高校生は、10年浪人しようが、50年浪人しようが、東大に合格することはないでしょう。

理由はかんたんです。

東大の受験科目には、体育がないからです。

だから、どんなに走り込みをしたり、筋トレをしたりして、体育の点数を向上改善させても、それが、どんなに苦労を伴い、負荷がかかり、尊い、立派な努力であっても、その努力は、東大合格、という点に限っては、全く意味がありません。

なぜか。

対処課題をはっきりさせないまま、闇雲に努力をしているからです。

努力が、目的に結びついていないからです。

努力が、目的から逆算された、合理的で有益なものではないからです。

もっといえば、そもそも、自分の適性や能力に見合った目的の設定がなされていなかったのかもしれません。

大事なことは、頑張ることではありません。

まず、行うべきは、ゴール・デザインや、課題の発見・特定・定義です。

これを行う前に、闇雲に資源動員しても、無駄になるだけです。

著:畑中鐵丸

00108_「ベンチャー企業経営者が陥りがちなビジネス・マネー・人生全般における失敗」の傾向と対策_3_人生における対処課題(改善目標やリスク)の因数分解的整理

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本コンテンツシリーズは、アジア経営者連合会「ALA経営塾」主催にて、令和3(2021)年3月25日(木)17時30分開始にて行われました、弁護士畑中鐵丸の講演「組織と個人の用心棒、顧問弁護士の使い倒し方・ベンチャー企業経営者特有の失敗の傾向と対策~ベンチャー企業経営者なら皆さん身に覚えがあるビジネスやプライベイトの失敗事例と対策のための”あの手・この手・奥の手”を25年超のキャリアをもつベンチャー弁護士が直接伝授します~」の講演レジュメ及び講演録から編集したものです。なお、本講演内容は、筆者(講師)独自の見解であり、所属組織及びアジア経営者連合会ないしALA経営塾のものとは一切関係ありません。
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皆さんは、違う考え方をされるかもしれませんが、私の人生の目的は、人生を楽しむことです。

すなわち、「笑いが止まらないくらい、楽しく、憂いなき人生を送る」ことが生きる目的です。

そして、日々、「どうやったら、『笑いが止まらないくらい、楽しく、憂いなき人生を送る』ことが出来るか」ということを、それこそ死物狂いで考えています。

実際、東大卒の矜持にかけて、自分の全知能を傾けて、かなり、論理的、合理的、分析的に考え抜いています。

「笑いが止まらないくらい、楽しく、憂いなき人生を送る」ためには、改善したり発展させたり修正したりすべきテーマ(目標)を設定した上で、これらの課題に対処して、また、悲しい思いをしないよう、辛い思いをしないようにしておかなければなりません。

そして、そのためには、まず、「改善したり発展させたり修正したりすべきテーマ(目標)を設定した上で、これらの課題」とは何ぞや、ということを明確に発見し、特定し、把握し、整理しておかないといけません。

ところで、お金持ち、小金持ち、これらを目指す野心家に限らず、たいていの方にとって人生のテーマや課題は、一見すると複雑怪奇なようですが、実はそれほどでもなく、ちょっと思考をめぐらせれば、実にシンプルかつスマートに整理されます。

すなわち、人生のテーマないし課題は、
1、ビジネス(商売、事業、仕事)、
2、財産(マネー)、
3、健康、
4、暮らし、
5、子供、
の5つに集約されます。

すなわち、たいていの方の生きる上での悩みは、
1、ビジネス(商売、事業、仕事)=仕事や商売をうまく伸ばしたい・仕事や商売がうまくいかない、
2、財産(マネー)=カネを増やしたい・減らしたくない・盗られたくない、
3、健康=美容と健康を維持したい・改善させたい、病気の悩みがあるので何とかしたい、
4、暮らし=生活する上での不安やストレス、夫婦や家族や知人や親族といった人間関係の問題、
5、子供=子供がいじめられている、子供がいじめている、子供が勉強しない、子供が希望の学校に合格するか不安だ、
のどれかに収斂します。

もちろん、地球環境が心配とか、差別なき社会が実現出来るか不安とか、SDGsが本当に達成出来るか悩んで夜も寝られない、という方もいます。

しかし、そういう方のメンタリティは、私は理解は出来るものの、ある程度共感出来るものの、悩むとか不安で寝れないとか言われるとそんな共感レベルではありません。

大体、地球環境や、他人の差別意識や偏見、持続可能な社会などという代物は、私が制御出来る次元を超えた話であり、制御出来ない課題に悩むのは生産的ではありません。

その意味では、自分ではおよそ制御出来ない課題に心を痛め、夜も寝れない、というメンタリティは、私の理解を超えています。

虫や動物や宇宙人が何かに悩んでいるとしても、その悩みは私ではどうすることも出来ませんし、どうかしてあげようという気も起きません。

したがって、そういう「高尚な人生の悩み」は、私の研究テーマから外れますので、一切無視します(無視しますが、重要ではないとか一言も言っていませんので、誤解なさらないようお願い申し上げます)

前述のとおり、人生のテーマないし課題は、
1、ビジネス(商売、事業、仕事)、
2、財産(マネー)、
3、健康、
4、暮らし、
5、子供、
の5つに集約される、という前提を言い換えますと、要するに、
【人生】=【ビジネス(仕事)】+【財産(マネー)】+【健康】+【暮らし】+【子供】
で成り立っている、と要素分解することが可能と考えます。

著:畑中鐵丸

00107_「ベンチャー企業経営者が陥りがちなビジネス・マネー・人生全般における失敗」の傾向と対策_2_「人生に失敗する原因」と思われるもの

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本コンテンツシリーズは、アジア経営者連合会「ALA経営塾」主催にて、令和3(2021)年3月25日(木)17時30分開始にて行われました、弁護士畑中鐵丸の講演「組織と個人の用心棒、顧問弁護士の使い倒し方・ベンチャー企業経営者特有の失敗の傾向と対策~ベンチャー企業経営者なら皆さん身に覚えがあるビジネスやプライベイトの失敗事例と対策のための”あの手・この手・奥の手”を25年超のキャリアをもつベンチャー弁護士が直接伝授します~」の講演レジュメ及び講演録から編集したものです。なお、本講演内容は、筆者(講師)独自の見解であり、所属組織及びアジア経営者連合会ないしALA経営塾のものとは一切関係ありません。
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1)世の中、大事なことほど、本に載っていないし、親や学校の先生は教えてくれない。というか、親や学校の先生は、知らないし、むしろ、逆のことを教える(人生、お金だけじゃない。友達を信じろ。最後は正義が勝つなど)。

2)学校で教わることは、理想論。すなわち、キレイゴト。すなわち、ウソ。人生の大事な場面では、ウソやキレイゴトは通用しない。現実に向き合い、現実的に思考し、現実的に対処しないと、失敗する。

3)人生の一大事や大きな仕事の重要局面という、非日常的場面で、常識を働かせて、非常識な状況に対応できず、失敗する。

4)そもそも、「良き人生」「憂いなき人生」が定義できていない。定義できていないので、現実とのギャップが意識できない。そもそも、どういう思考秩序で考えるべきか、すらわかっていない。ぼんやり過ごして時間という貴重な資源を失う。

「人生をうまいこと送るための、卑怯で、姑息で、依怙贔屓の塊で、立派で公正とは言い難い、(違法ではないもの)腹立たしいほど不公平とも言える、知見や方法論や手法」

は、本に載っていませんし、普通のご家庭や学校では教えてくれません。

さらに言えば、そもそも、普通のご家庭の親御さんや学校の先生は、この種のことを全くといっていいほど知りません。

いや、むしろ、普通のご家庭や学校では、真逆のことを教えています。

普通のご家庭の親御さんや学校の先生は、

「寝ても覚めても金儲けのことを一生懸命考えなさい」

「いっぱい金儲けして金持ちになりなさい」

「法律に明確に書いていないことはやっていいことだから、目ざとく、すばしっこく、法律の穴をみつけて、ずる賢く大儲けしなさい」

「株式投資をしなさい」

「オプションやデリバティブを勉強して、効率的に資産を増やしなさい」

などとは教えません。

といいますか、普通のご家庭の親御さんや学校の先生は、その種のことを知りもしませんし、これらと正反対のことを教えます。

そして、残念なことに、普通のご家庭の親御さんや学校の先生が教える「理想論」という名の「キレイゴト」ないし「ウソ」は、「お金持ちや小金持ちになったり、あるいはこれらを目指す」上では、有害な洗脳として作用してしまいます(もちろん、清く、正しく、貧しく、慎ましやかに生きる上では、正しく価値ある洗脳としてポジティブに作用します)。

しかし、お金持ちや小金持ちになったり、あるいはこれらを目指すなら、どこかで、この

「本に載っていないし、普通のご家庭や学校では教えてくれないし、そもそも、普通のご家庭の親御さんや学校の先生が知りもしないし、経験もしたことない知識や思考法や実現技術」

を学ばなければなりません。

https://www.tetsumaru.com/archives/%e6%9c%ac%e3%82%b5%e3%82%a4%e3%83%88%e3%81%ae%e3%81%94%e7%b4%b9%e4%bb%8b2/
より

著:畑中鐵丸

00106_「ベンチャー企業経営者が陥りがちなビジネス・マネー・人生全般における失敗」の傾向と対策_1_人生の失敗のパターン

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本コンテンツシリーズは、アジア経営者連合会「ALA経営塾」主催にて、令和3(2021)年3月25日(木)17時30分開始にて行われました、弁護士畑中鐵丸の講演「組織と個人の用心棒、顧問弁護士の使い倒し方・ベンチャー企業経営者特有の失敗の傾向と対策~ベンチャー企業経営者なら皆さん身に覚えがあるビジネスやプライベイトの失敗事例と対策のための”あの手・この手・奥の手”を25年超のキャリアをもつベンチャー弁護士が直接伝授します~」の講演レジュメ及び講演録から編集したものです。なお、本講演内容は、筆者(講師)独自の見解であり、所属組織及びアジア経営者連合会ないしALA経営塾のものとは一切関係ありません。
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1)不安と混乱の中、何をしていいかわからず、ただただ無為に人生を送り、時間という貴重というな資源を喪失して、人生を終わる。

2)目標が設定できない。目標を設定するのが遅すぎ、目標が判って設定出来たころには、対処資源(特に時機、すなわち時間やタイミング)を失っていて、時すでに遅し、で失敗する。

3)目標は設定出来たが、自分に適した、現実的で達成可能な目標ではなく、持続不能に陥り、失敗する。

4)目標が設定出来、当該目標を達成するための課題に気付くのが遅すぎて、対処資源(特に時機、すなわち時間やタイミング)を失って、時すでに遅し、で失敗する。

5)ゲームに参加したものの、ゲームの環境、ゲームのロジック、ゲームのルールをよくわからないまま、参加したことが災いして、敗北し、失敗する(敗北してから、ようやく、ゲームの環境、ロジック、ルールが帰納的に実感出来るが、あまり意味がない)

6)誰かを信頼して失敗する。他人(友達、パートナー、取引先、役所、警察、裁判所。あと、親や小学校の先生が教えたキレイゴトを信じて失敗する場合における、無責任なキレイゴトを教示する親や先生といった「他人」)を信頼して失敗する。自分や自分の常識(という偏見)を信頼しすぎて(過大評価して)失敗する。

著:畑中鐵丸

00105_苛酷な社会を生き抜くための「正しい非常識」33・終_総括_20201220

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本コンテンツシリーズにおいては、個人で商売する方や、資産家や投資家や企業のオーナー経営者の方、出世して成功しようという意欲に燃える若い方、言い換えれば、「お金持ちや小金持ち、あるいはこれを目指す野心家の方々」へのリテラシー啓蒙として、「ビジネス弁護士として、無駄に四半世紀ほど、カネや欲にまつわるエゴの衝突の最前線を歩んできた、認知度も好感度もイマイチの、畑中鐵丸」の矮小にして独善的な知識と経験に基づく、処世のための「正しい非常識」をいくつか記しておたいと思います。
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これまで、苛酷な社会を生き抜くための「正しい非常識」として、起業を考えたり、将来経営幹部を目指したり、すでに家業をついでオーナーとして企業経営をしておられる方の心構えに至るまで、
「過酷な経済社会を生き抜くための表層的なノウハウ、テクニック」
を超えた、
「本質的なリテラシーやマインドセットを含めた生き方、考え方」
をお伝えしてきました。

いずれも、
「好感度がイマイチで、マイノリティ志向の強い、毒舌家で、(本人にはさっぱり理由は不明ながら)とかく敵が多い、畑中鐵丸」
が語る、
「誰にでも適用されるべき普遍的理念」
とは真逆の、
「極めて適用範囲の狭い、独善的で偏見に満ちた代物」
といえなくもなかった代物であったかもしれません。

そんな、好感度が芳しくなく、とかく口の悪い畑中鐵丸ですが、
「これだけは、美徳として堅持している」
というものがあります。

それは、畑中鐵丸の気質として、
「ウソをつくのが下手くそ」
というか、
「ウソをつけない」
というか、
「思ったまま、考えたことを口に出してしまう」
という点です。

美点なのか欠点なのかは捉え方にもよりますが、私の語る内容は、だいたい、的のど真ん中を射ちゃっていると思います。

畑中鐵丸は、
「理想」
を語るのは、苦手というか、下手クソです。

だって、
「理想」
って、現実とは違う、いってみれば、キレイでデオドラントな
「ウソ」
ですから。

「仕事や人生の大事な局面」で、「常識や、学校の先生や親に教えられたことや、テレビや新聞で言っていること」にしたがうと、たいてい失敗します。

「常識や、学校の先生や親に教えられたことや、テレビや新聞で言っていること」は理想であり、キレイゴトであり、耳障りはいいものの、役には立たないのです。

「仕事や人生の大事な局面」は、「キレイゴトではどうにもならない、圧倒的な現実」が大きく立ちはだかり、これに対して、「あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、反則技」を繰り出す「ルール軽視の何でもあり」で死にものぐるいで生き残るような場面ですから。

いずれにせよ、人生、世渡り、身過ぎ世過ぎの上で、役に立つのは、キレイゴトではなくリアリティです。

弁護士として、企業の大事や切所に立ち会う専門家として、常に、リアリティを語ってきましたし、現実に立ち向かうためのリアリティを語ろうとすると、クライアントや関係者がキレイゴトを盾に邪魔をし、足を引っ張ります。

キレイゴトは、有害に作用し、キレイゴトに沿った処理をすると、たいてい首を締め、死期を早めますし、結局は利敵の論理に過ぎません。

その意味では、私は、常に、リアリティを語り、敵と同時に、キレイゴトを語って利敵に回る内部の世間知らずの大馬鹿者と対向する、という二正面作戦を強いられ続ける職業人生を歩んできました。

その意味で、私は、現実を、みたまま、とらえたまま、正確に伝えるのは、得意です。

ウソをついたり、美辞麗句でごまかしたり、といった面倒なことをしなくて済みますから。

他方、真実ほど、残酷に人を傷つけるものはありません。

あるとき、クライアントの高齢の社長に言われたことがあります。

「先生、何をいっても結構だ。タブーなき議論が大事だ、というのもわかる。けれどもね、本当のことだけは言っちゃいけない。先生から、反論できない事実や真実を言われると、本当につらくなるし、死にたくなるからさ」
と。

しかしながら、
「真実、事実、現実、本当のこと」
は、課題の発見・特定・処理に不可欠であり、
「真実、事実、現実、本当のこと」
を避けては、問題の改善はおよそ困難です。

もちろん、ここで今まで述べたことは、
「真実、事実、現実、本当のこと」
のほんの一部です。

まだまだ、きちんと把握し、再確認しておくべき
「真実、事実、現実、本当のこと」
は無限にあります。

では、どうやって、偏見や誤認や誤った評価・解釈を避けて、
「真実、事実、現実、本当のこと」
を正しく、客観的に、フェアに到達する知性や感性を身につけるべきか。

それは、実は簡単なことです。

子供のころから、耳にタコができるくらい、繰り返し言われてきた、親御さんや、小学校の先生や、テレビや、新聞がインプットしてきた
「常識」
「良識」
「社会のルール」
「道徳」
「倫理」
といったものを、すべて忘れ去ることです。

親御さんや、小学校の先生や、テレビや、新聞が、
「教育」
という名の
「洗脳」作用
を通じてインプットしてきた
「常識」
「良識」
「社会のルール」
「道徳」
「倫理」
なるものは、いってみれば、
「理想」
をキレイゴトとして美しく語っているに過ぎず、それは、
「真実や現実とは真逆のもの」
であって、いってみれば、耳に心地いい
「ウソ」
に過ぎません。

「ウソ」
をありがたく奉じて、真実や現実をないがしろにしては、問題解決はおろか、課題の発見・特定すら困難です。

20世紀最大の物理学の権威にして、歴史的な天才科学者であるアインシュタインは、
「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう」
と喝破しました。

「常識や良識や社会のルールや道徳や倫理にしたがって考え、行動していたら、どうもうまくいかない。何か違和感を感じる」
そんなときは、
「常識や良識や社会のルールや道徳や倫理」
こそ疑ってみるべきです。

もちろん、
「『常識や良識や社会のルールや道徳や倫理』のすべては無価値で無意味である」
というような過激なことを言うつもりありません。

ですが、
「常識や良識や社会のルールや道徳や倫理」
にも
「耐用年数」
というものが観念できます。

ひょっとしたら、
「常識や良識や社会のルールや道徳や倫理」
なるものが、制度疲労や本質劣化の限界に達していて、効用喪失を通り越して、有害になってしまっており、それが、
「違和感」
となって皆さんに警告音を発しているのかしれません。

私がよくクライアントや学生や弟子にお伝えする話として、こんな事例があります。

「それまで圧倒的通説であった天動説が、何時、どのようなプロセスを経て、地動説に、通説の座を譲ったのか、知っていますか」
「天動説の学者が、観測データや天文現象を目の前にして、その背景原理における自説の致命的な誤りに気づいて、非を認め、大いに恥じ入り、膝を屈して、『私が愚かでした。バカでした。間違っていました。地動説の正しさを認めます。今までアホな考えに固執してすいませんでした』とお詫びしつつ、説を変え、転向したのでしょうか」
と。

実際は、バチカンの天動説の学者は、どんな観測データや天文現象を突きつけられても、コペルニクスが地動説を唱えてから400年近くも、頑として、自らの誤りを認めず、自説の正しさに固執し、
「下水管のネズミ」
のようにしぶとく生き残り続けました。

バチカンの天動説の学者が死ぬときも、死してなお、有害な毒でしかない愚昧な自説を譲らず、生き残った者にまで愚かさを感染させていきました。

すなわち、天動説の学者は、自らの死の間際に、弟子や後継者たちに、
「いいか、地動説は絶対間違いだからな。邪説だからな。どんな観測データや天文現象を示されても、悪魔の説だ。わかったな。オレが死んでも、天動説を信奉し、地動説などという異説・邪説に転向するなよ。もし転向・変節したら、化けて出てやるし、おまえら全員地獄に行き、煉獄の炎に焼かれるぞ」
と真顔で脅迫して、それこそ
「孫子の代」
まで、
「天動説」
という愚説を信奉するよう強制したのです。

こうして、天動説という愚説は、バチカン内部で、400年近くも
「冷蔵庫の裏のゴキブリ」
のようにしぶとく生き残り続けたというわけです。

バカチン、もといバチカンが、地動説に転向したのは、1993年になってからです。

ネコが粗相を隠すように、転向をさとられないよう配慮しつつ、地味に、ひっそり、姑息に、ひそひそ、しれっと、知らない間に、さっくり、転向しました。

実に、姑息で、卑怯で、卑劣なやり方で、
「異説を唱える反対者を火炙りにしてまで守り続けた、愚説としての自説」
をしめやかに放棄し、人目を憚り、こっそり、ひっそり転向したのです。

「バカは死ななきゃ治らない」
などといいますが、天動説を組織的に信奉したバカチンもとい、バチカンの頑迷固陋ぶりは、これを通り越しています。

「死んでも治らないバカ」
「死してなお、生き残ったものも縛り付ける有害ではた迷惑なバカ」
とでもいうべき、地獄に落ちてもいいくらいのバカさ、アホさ、愚劣さです。

また、転向の際の卑劣さや姑息さも際立っており、唾棄すべき品位低劣さです。

「ちゃんと、自己批判して、総括しろよ」
「ガリレオやコペルニクスといった天才たちに、三跪九叩頭の礼を以て、きちんと謝罪しろよ」
と言いたくなります。

何を言いたいか、といいますと、
「常識にとらわれるな」
「違和感が生じたら、違和感こそ大事にしろ」
「自分の違和感を疑わず、教育の名の下に行われた『洗脳』によって18歳に植え付けられた『常識』という『偏見のコレクション』をこそ疑え」
ということです。

著:畑中鐵丸

初出:『筆鋒鋭利』No.161、「ポリスマガジン」誌、2020年12月号(2020年11月20日発売)