たとえば、ラーメン屋を開業しようとする人がいたとしましょう。
自分でスープを仕込み、麺も打ち、看板も描き、チラシを印刷し、SNSで宣伝しながら、調理から接客、レジ打ちまで、すべて一人でやると言い出したら・・・。
それはもう、やる前から無理があるとわかります。
実際には、厨房には麺場とスープ係がいて、ホールにはスタッフがいて、店の設計や立地選びは別の専門家が支えています。
それでも飲食店の9割は潰れる。
なのに、一人で全部やるというのは、もはや
「潰れに行っている」
とすら言えるかもしれません。
ウェブコンテンツも、まったく同じです。
いや、ネットの世界では
「1秒で帰る」
人々が相手ですから、ラーメン屋よりシビアかもしれません。
おいしいかどうか以前に、
「見た目が微妙」
「タイトルがイマイチ」
「文字が読みにくい」
このような理由だけで、何も読まれずに終わるのです。
そこで必要なのが、分業と専門性です。
実際のウェブプロジェクトでは、次のような役割分担が求められます。
・ニーズを拾い上げる「取材者」
・プロとしての見解を語る「専門家」
・ユーザー目線の文章を書く「ライター」
・読みやすく魅せる「ウェブデザイナー」
・人を集める「プロモーション担当」
・全体を見渡す「プロデューサー」
それぞれが異なるスキルを持ち、異なる視点で動きます。
どれか1つでも欠けると、全体が崩れるのです。
しかも、予算は
「ウェブデザインだけ」
では済みません。
むしろ、最も費用がかかるのは、
「おもしろさ」
「役立つ中身」
をつくる部分です。
要するに、原案・構成・シナリオ・編集といった
「見えないけれど本質的な仕事」
です。
この構造、どこかで見たことありませんか?
そう、漫画ビジネスです。
今や商業マンガは、
・取材者
・原案担当
・シナリオライター
・レイアウト構成者
・イラスト担当
・製本・流通・広告・販促
・編集とプロデューサー
が、それぞれ分業しながら、1冊のマンガを形にしていきます。
「一人で全部やる」
のは、プロの世界ではあり得ません。
それは同人誌の世界です。
もちろん否定するつもりはありません。
しかし、
「同人誌レベル」
のものを
「商業レベル」
の市場で出したところで、即座に淘汰されるのが今のインターネット社会です。
同人誌は30人が集まって、30人が帰っていく世界。
ネットは30人すら立ち止まらず、1秒でスクロールアウトします。
趣味ではなく、事業としてやるのなら・・・
人を集め、人を動かし、人を魅了するには、分業体制とプロの力が不可欠なのです。
著:畑中鐵丸