退職時、元勤務先から
「転職先のウェブサイトができたら連絡しろ」
と言われたら、あなたはどうしますか?
素直に従うのは、自ら首輪をはめに行くようなものです。
本記事では、外資系巨大企業からの圧力に対し、あえて
「無視」
と
「開き直り」
で対抗するリスク管理術と、競業避止義務という“鎖”を無効化するための法的なロジックについて解説します。
<事例/質問>
先生、古巣からのプレッシャーに胃が痛くなりそうです。
私は3月末に、世界的な巨大IT企業(ギガティ株式会社(仮称))を退職し、ベンチャー企業に参画することになりました。
そして、そのベンチャーの関連プロジェクトとして、新たなウェブサービスを立ち上げる予定です。
退職にあたり、古巣のギガティ社側から
「転職先のウェブサイトができたら、URLを連絡するように」
と言われています。
もし連絡すれば、リンクを辿って新たなウェブサービスの存在が知られることになり、
「これは競業ではないか!」
とイチャモンをつけられる可能性があるかもしれません。
アドバイザーからは、
「ギガティ社と競合する仕事には関与しない旨を宣誓する書面を、ベンチャー企業に提出して身の潔白を証明しておけばどうか」
と言われていますが、どうも不安です。
ギガティ社からの追及をかわすために、どのような書面を用意し、どう対応すればよいでしょうか?
<弁護士畑中鐵丸の回答・アドバイス・指南>
それは真面目すぎますねえ。
巨大企業の
「言いつけ」
を、なぜそこまで律儀に守ろうとするのですか?
結論から申し上げます。
「聞かれてもいないことを自ら報告するのは、『自殺行為』です。まずは『無視』、バレたら『開き直り』。これが弱者の兵法です」
ご相談の状況を、冷徹なシナリオ分析(シミュレーション)にかけてみましょう。
1 「URLの連絡」は義務か、マナーか?
まず、ギガティ社からの
「URLを教えろ」
という要求。
これは、法的な義務でしょうか?
就業規則や誓約書に
「退職後のURL報告義務」
なんて条項、ありましたか?
おそらくないはずです。
単なる担当者の
「マナー・エチケットとしてのお願い(というか、監視のための釘刺し)」
に過ぎません。
義務でないなら、やる必要はありません。
自分からURLを教えるというのは、
「ここに獲物(私)がいますよ。どうぞ撃ってください」
と、自分の位置情報を敵に送信するようなものです。
グーグル検索の手間を省いてあげる義理など、どこにもありません。
2 最悪のシナリオと、最高の切り返し
では、もしギガティ社が独自に嗅ぎつけてクレームをつけてきたらどうするか。
その時の
「喧嘩の作法」
をシミュレーション(脳内リハーサル)しておきましょう。
• ギガティ社: 「オイ、お前のやってるウェブサイトって、ウチの競合じゃねーか。契約違反だぞ!」
• あなた: 「はあ? 何のことですか? 私は関わっていませんし、仮に関わっていたとしても、御社のビジネスとは別物です(ファイヤーウォールはある)」
• ギガティ社: 「うるさい! 退職金の一部(ストックオプション)、払わないぞ! 制裁だ!」
• あなた(心の声): 「どうぞどうぞ。たかが数年分のストックオプション程度、くれてやりますよ。その代わり、職業選択の自由を侵害する違法な拘束には従いません。そもそも、その競業避止義務契約、判例照らしたら無効ですよね? バカじゃないの?」
これが、目指すべきゴール(開き直り)です。
相手が海外本社なら、なおさら日本語のサイトなど読めないでしょう。
「怪しまれるまで、死んだふりをする」
のが最善手です。
3 「宣誓書」は“魔除けのお札”として
アドバイザーの方から提案された
「競合に関与しない旨の宣誓書」
を今の会社に出しておく、というアイデア。
これは、法的な効力というより、
「私は身の潔白を証明するポーズをとっていますよ」
という
「アリバイ作り(魔除けのお札)」
として有効です。
いざという時に、
「ほら、私はこんなにコンプライアンスを意識していました」
と見せるための道具として、作っておくのは悪くありません。
結論
巨大企業の
「監視の目」
を恐れる必要はありません。
彼らは、去りゆく者が怖いから吠えているだけです。
「URL? 送り忘れました」
「競業? 違いますけど?」
このくらいの図太さを持って、新しい世界で暴れ回ってください。
著:畑中鐵丸