00260_ケーススタディ_「敗戦の領収書」という名のラストオーダー_裁判費用の請求書が届いたときの“正しい諦め方”

裁判に負けた後、相手から
「訴訟費用」
を請求されると、
「相手の弁護士費用まで払わされるのか?」
と青ざめる経営者がいます。 

しかし、日本の裁判制度において、その心配は(原則として)杞憂です。 

本記事では、敗訴後に届く
「訴訟費用額確定の申立書」
の正体と、それが実は
「恐るるに足らない少額の経費」
に過ぎない理由を解説し、スマートな敗戦処理の作法を伝授します。

<事例/質問>

先生、先日判決が出た「敗訴案件」について、嫌な書類が届きました。

当社は、元提携先との契約トラブルで訴えられ、残念ながら全面敗訴しました。 

判決に従い、損害賠償金はすでに支払ったのですが、本日、相手方代理人より 
「訴訟費用額確定の申立書」 
なる書類が裁判所に提出され、その副本が当社に送られてきました。

「訴訟費用は被告(当社)の負担とする」
という判決文言は見ていましたが、これはまさか、 
「相手方が雇った高い弁護士費用まで、全部こちらが払わなければならない」 
ということなのでしょうか?

負け戦のあとに、さらに法外な請求が来るのかと思うと、夜も眠れません。 

これは支払わなければならないのでしょうか?

<弁護士畑中鐵丸の回答・アドバイス・指南>

社長、ご安心ください。 

その請求書は、 
「高級フレンチのフルコース代金(弁護士費用)」 
の請求ではありません。 

単なる 
「ファミレスのドリンクバー代(裁判所の利用実費)」 
の請求に過ぎません。

結論から申し上げます。 

「額はたかが知れています。四の五の言わず、さっさと支払って、悪夢を終わらせましょう」

その理由を、日本の裁判制度というゲームの
「課金システム」
に従って、紐解いていきましょう。

1 「訴訟費用」とは「場所代」に過ぎない

まず、言葉の響きに怯えてはいけません。 

法律用語でいう
「訴訟費用」
とは、 
「裁判所という国の機関の利用料」 
のことを指します。

具体的には、
• 裁判所に納めた印紙代(手数料)
• 切手代(郵券)
• 証人の旅費・日当 
といった、
「実費」
の合計です。

要するに、 
「国営のケンカ闘技場(裁判所)を使うのにかかった入場料と電気代」 
のようなものです。 

負けた側が、この
「場所代」
を負担するのは、敗者のマナー(判決による義務)としてあきらめましょう。

2 日本の裁判は「負けても地獄ではない」

社長が一番恐れているのは、 
「相手の弁護士費用」 
でしょう。 

しかし、ここに日本の法制度の
「慈悲」
があります。

日本の法律制度においては、原則として
「弁護士費用」
は負けた側に負担させることはありません(ただし、例外はあります)。

これは世界的に見ても特徴的なルールです(アメリカなどとは異なります)。 

相手がどんなに高名で高額な弁護士を雇っていようが、何千万円払っていようが、それは相手の勝手です。 

「贅沢な武器(高い弁護士)」
の代金まで、敗者が負担する必要はないのです。

ですから、今回請求されているのは、 
「実際は印紙代プラスαのみ」 
であり、企業取引の規模からすれば、おそらく 
「額としては妥当なもの(微々たるもの)」 
に収まっているはずです。

3 「敗戦処理」の美学

この申立書が来たということは、 
「もう戦争は終わりましたよ。あとは清掃費だけ払ってください」 
という合図です。

これに対して、 
「1円でも払いたくない!」 
と抵抗するのは、見苦しいだけでなく、時間の無駄です。 

計算式が決まっている以上、 
「裁判所によってもこの請求は認められる」
 のは確実であり、抵抗しても 
「支払いに応じるほかない」 
のが現実です。

4 結論

この請求書は、長い戦いの 
「手切れ金」 
としては、格安です。

これを支払うことで、この不愉快な事件との縁が、法律的にも、経済的にも、完全に切れます。 

さっさと振り込んで、明日の商売のことを考えましょう。 

それが、経営者としての、最も生産的な 
「損切り」 
です。

著:畑中鐵丸