00231_知ってるだけでは足りない_キャリアを動かす“使える知識”とは

「この話、聞いたことある」
と、よく言う人がいます。

それ自体は、悪くありません。

勉強熱心で、勘もいいですし、人の話にもよく耳を傾けています。

しかし、問題はその先です。

その
「聞いたことのある話」
を、
「自分の言葉で説明できますか?」
「具体的な場面で使えますか?」
ということです。

要するに、知っているだけでは、足りないのです。

知識は、
「使える」
ようになって初めて、自分の武器になるのです。

「知ってるのに動けない」―その壁の正体

たとえば、料理のレシピを思い浮かべてください。

見ただけで
「知った気」
には、なるでしょう。

しかし、いざ自分で作ってみると、分量も手順も、どこかおぼつかない・・・。

そんな経験はありませんか。

ビジネスの現場でも同じです。

情報は、手に入ります。

ノウハウも、ネットや書籍にあふれています。

ところが、それを実際に
「使う」
となると、話は違ってきます。

「こんなはずじゃなかった」
「どうもうまくいかない」
「聞いてた話と違う」

それは、
「知識」
から
「実践」
への転換ができていない状態です。

「知ってはいる」
けれど、
「行動にはつながらない」
ということです。

もっと言えば、行動以前の問題――
「言葉にできていない」
ということなのです。

考えがまとまっていないから、人にもうまく説明できない。

そういう
「ふわっとした知識」
は、ビジネスでは何の武器にもなりません。

むしろ、ビジネスの世界で生き残れません。

話せる人は、考えている。考えている人は、動ける。

キャリアの現場で差がつくのは、ここです。

よくできる人ほど、知っていることを
「自分の言葉で語る」
ことができます。

要するに、言語化ができているのです。

言語化されていれば、相手に伝えることができます。

伝えられれば、チームで共有できます。

共有できれば、他の人の行動につながります。

一人の知識が、他人の行動を生み出すのです。

この連鎖を起こすには、知識を
「ミエル化・カタチ化」
していく必要があります。

逆に言えば、
「なんとなくわかってるんだけど」
「あれなんだっけな」
という
「あいまいな知識」
では、誰の背中も押せません。

だからこそ、必要なのです。

自分の考えを、筋道立てて話す訓練。
知識を、紙に書いてみる作業。
フォーマルな文書に落とし込む試み。

これら地味な繰り返しこそが、ビジネス・キャリアを支える土台になります。

なぜ「言語化・文書化」がキャリアの鍵になるのか?

「自分で説明できる状態」
になるには、ただ
「繰り返し聞く」
だけでは足りません。

誰かに話してみる。
図に描いてみる。
文章にまとめてみる。

そうした
「手を動かすプロセス」
を何度も繰り返して、ようやく
「知識」

「使える道具」
になっていくのです。

ビジネスの現場では、言葉になっていない情報や、メモに残っていないノウハウは、ほとんど役に立ちません。

なぜなら、それは他者に
「渡せない」
からです。

いくら頭の中にあっても、口から出なければ意味がありません。

いくら感覚で理解していても、文章にできなければ再現できません。

要するに、言語化できる人だけが、チームを動かすことができるのです。

キャリアとは、「使える知識」を増やすこと

ここまでは、「言語化・文書化」がなぜ“動ける人”につながるのかを見てきました。

ここで話は、もう一段深くなります。

本当に違いが出るのは、その先のキャリアの話です。

「言葉にできるかどうか」
は、単なるスキルの話ではなく、あなたの職業人生を左右する話なのです。

ひと昔前のように、
「知識の量」
で勝負できる時代ではありません。

今は、ググれば何でも出てくる時代です。

だからこそ、
「知っていること」
そのものには、もはや価値はありません。

問われるのは、
「どう使うか」
「どこで生かすか」
そして、
「誰かに伝えられるか」
です。

キャリアとは、
「知っていること」

「使えること」
に変えるプロセスの連続です。

その一歩目が、言語化・文書化なのです。

たとえば、
・会議での気づきを、すぐにメモにする
・日報で、今日の学びを言語化する
・議事録として、次に使えるようにまとめておく

こうした
「地味な積み重ね」
の先に、知識が
「自分のもの」
になっていきます。

ビジネスの現場においては、
学んだ知識を「話せるカタチ」に。
理解したことを「書けるカタチ」に。

「ミエル化・カタチ化」
を意識するだけで、知識が
「武器」
へと変わっていくのです。

「知ってる」から「動ける」へ――キャリアはここから始まる

ただの知識から、使える知恵へ。
ただの記憶から、動ける力へ。

キャリアは、
「知っていることを、言葉にする」
その瞬間から動き出します。

「知ってるだけでは足りない」
――今、あなたのキャリアに
「使える知識」
はいくつありますか?

著:畑中鐵丸