00221_ケーススタディ_ 価値はあるのに、なぜ響かないのか_感性で選ばれる市場で、生き残るということ

<事例/質問>

新商品のローンチを控えており、差別化の戦略に頭を悩ませております。

ターゲットは、わたしと同じ40代女性です。

商品は、季節の変わり目に肌荒れしやすい人に向けた、美容サポート飲料です。

・ベリー系のナチュラルフレーバー
・植物発酵エキスとビタミンを独自配合
・「外からじゃなく、中から肌を整える」がコンセプト
・パッケージは白とピンクを基調に、シンプルで清潔感のあるデザイン

わたし自身、発酵を長く研究してきたこともあり、成分の設計には独自の工夫を盛り込み、かつ専門的な裏づけもあり、これは売れる、と自負していました。

ところが、ローンチ前のテストでは、
・類似商品が多すぎて、違いが伝わりにくい
・技術的な裏付けがあっても、「へぇ、で?」で終わってしまう
このようなフィードバックが数多く寄せられました。

わたしは、自分が女性で、それこそが強みだと思って、今までやってきましたが、女性を相手にする商売って、やっぱり難しいのでしょうか。

難しいのは、女性が相手だからなのか、それともわたしの“伝え方”なのか。

「誰に、何を、どう伝えればいいのか」
「価値はあると思うのに、どうして響かないのか」
今、迷路にはいってしまったような感覚です。

<弁護士畑中鐵丸の回答・アドバイス・指南>

「女性を相手にする商売って、やっぱり難しいのでしょうか」
「難しいのは、女性が相手だからなのか、それともわたしの“伝え方”なのか」
この問いかけは、実に本質を突いています。

それに対する答えは、
「どちらも正しい。そして、どちらも問い続けるしかありません」

もっとも難しい商売とは、感性の鋭い人たちを相手にする商売です。

「美容」
「健康」
「快適さ」
「安心感」
そのすべてに対して、自分の感覚で選び取ろうとする人たち。

たとえば、あなたと同じ40代の女性たち。

たとえば、子どもの肌や健康を気づかう親御さんたち。

この層の消費者は、我慢しませんし、遠慮もしません。

良くなければ、すぐに離れます。

なんとなく、では決して買いません。

「へぇ、で?」
で終わる商品は、そもそも手に取りません。

ブランドの“顔”が曖昧なら、不安に思うのが、この層です。

気に入られなければ、1回で終わり、2回目はありません。

要するに、義理もなければ情もない、欲と感性だけが、すべてを決める市場です。

ここに参入するというのであれば、ただ良い商品を出すだけでは足りません。

「なんとなく参入して、なんとなく誰かに届けばいい」
そんな態度では、1秒で見破られます。

この市場において、伝え方とは“技術”であり、“構造”であり、そして——“覚悟”です。

あなたの商品には、専門的な裏づけも、真摯な思いもあるでしょう。

けれども、それが
「わたしにとって何の意味があるのか」
が見えなければ、この市場にいる消費者には響きません。

違いが伝わらないのは、商品のせいではありません。

伝え方が、まだ定まっていないのです。

伝え方とは、ただの言い回しではありません。

商品そのものの
「立ち位置」
「意味づけ」
を、もう一度ゼロから設計しなおす作業です。

・誰の、どんな悩みを、どの場面で、どう解決するのか。
・どこで競合と違いをつくり、どこで刺さる言葉を見つけるのか。
・どんな言葉で、どんな形で、どんな空気で、伝えるのか。
・それらを、ミエル化し、カタチ化し、言語化し、文書化し、フォーマル化する。
・あらゆる工夫を、誠意と覚悟をもって注ぎ込む。
・伝えるために必要なことを、ひとつずつ、丁寧に組み立てていく。

それが、感性で選ばれる市場で生き残る最低条件です。

それほどの覚悟が、最初から求められています。

あなたの迷いは、決して無駄ではありません。

迷路に見えるそのプロセスにこそ、本当に響く伝え方のヒントが隠れています。

そして、その壁を越えたときにだけ、得られるものがあるのです。

・リピートという信頼
・口コミという影響力
・ブランドという、揺るがない存在感

たった一度の“がっかり”が、もう二度と取り戻せない距離を生む世界です。

だからこそ、たった一度でも心に届いた商品は、長くつかってもらえますし、静かに広がっていきます。

覚悟のない商品は、この市場ではただのノイズです。

覚悟のある商品だけが、静かに、しかし力強く、この感性で選ばれる市場で生き残っていくのです。

著:畑中鐵丸