00287_ケーススタディ_オーナー社長の偽装減収を暴く_不誠実な相手への交渉戦術

「業績が悪くて給料が下がったから、払うお金も減らしてほしい」。 

非上場企業のオーナー社長からこう言われたとき、その言葉を額面通りに受け取ってはいけません。 

彼らにとって自分の給与額は、水道の蛇口のように自在に操れる
「数字の遊び」
に過ぎないからです。 

本記事では、意図的に報酬を下げて支払いを逃れようとする相手や、過去の裁判所の決定すら守らない不誠実な相手に対し、どのように
「交渉の前提条件(踏み絵)」
を突きつけ、主導権を握り返すべきか、その戦術について解説します。

<事例/質問>

先生、別居中の夫のあまりに身勝手な要求について、対応をご指南ください。

夫(A男)は、中堅の健康食品・サプリメント通信販売会社の代表取締役(オーナー社長)です。 

もともと、夫の度重なる不貞と一方的な家出(遺棄)が原因で別居に至り、前回の調停・審判で、夫から私と子供への生活費(婚姻費用)の額が決定しました。

ところが最近になって、夫から
「会社の業績悪化で役員報酬を下げたから、生活費も大幅に減額してほしい」
と要求してきました。 

しかし、夫は前回の調停時にも、個人の確定申告書や会社の株式所有関係の資料提出を徹底して拒否し、財産関係を隠蔽した前歴があります。 

おまけに、裁判所が下した審判で定められた生活費すら、何の連絡もなく未払いを繰り返している状態です。

こんな
「自作自演の減収」
を理由にした減額協議に、応じなければならないのでしょうか?

<弁護士畑中鐵丸の回答・アドバイス・指南>

奥様、お怒りはごもっともです。 

相手の要求は、
「自分で自分の財布を空っぽにしておいて、『ほら、お金がないから払えないでしょ』と泣きついている」
ような、シビれるくらい見え透いた茶番劇です。

結論から申し上げます。

「相手の土俵(作られた数字)には一切乗らず、過去の未払い解消と情報の完全開示を『入場料』として突きつけ、相手が丸裸になるまで協議には応じないでください」

この不誠実な相手を追い詰めるための、プロの思考と戦術を解説しましょう。

1 オーナー社長の「給与減額」は、ただのボタン操作

まず、非上場企業のオーナー社長の
「給与明細」
を、一般のサラリーマンのそれと同じだと思ってはいけません。 

株式非公開の中小企業において、トップが自分の給与(役員報酬)を意のままに操作できることは、我々実務家にとっては
「太陽が東から昇る」
のと同じくらい常識(経験則上明らかな事実)です。

形式上は給与が下がっていても、法人の内部に利益を留保させたり、豪華な社用車や交際費などの
「経費」
として実質的な恩恵を享受し続けることはいくらでも可能です。 

つまり、彼らにとって給与の減額は、右のポケットの現金を左のポケットに移すような
「数字の遊び」
に過ぎません。 

「給料が下がったから」
という泣き言は、完全に無視して構いません。

2 「約束を破る相手」には、性善説を捨てよ

次に、相手の
「人間性」

「ゲームのルール」
を再確認しましょう。 

相手は、過去に事実を隠蔽し、あろうことか裁判所が下した審判(支払い義務)すら平然と無視して違約するようなお方です。 

法や義務を軽視し、裁判所の決定を
「町内会の回覧板」

「迷惑メール」
程度にしか思っていない相手に対し、
「ここはひとつ常識的に」
などと性善説で立ち向かうのは、丸腰でサバンナにピクニックに行くようなものです。

3 交渉のテーブルに着くための「4つの踏み絵」

このような相手からの
「減額協議」
の申し入れに対しては、無条件でテーブルに着いてはいけません。 

以下の4点を
「絶対に譲れない前提条件(入場料)」
として突きつけてください。

第1の条件:債務不履行の完全解消
過去の義務(未払い分)すら守らない人間と、新たな約束をするのは愚の骨頂です。
「まずは未払い分を耳を揃えて払うこと」が絶対条件です。
第2の条件:前回峻拒した情報(確定申告書等)の開示
第3の条件:株式を所有する会社の財務状況の開示
第4の条件:所有財産の現状や生活水準のミエル化

「本当の財布の厚み」
は、会社の内部留保や経費の使い方を丸裸にしない限り見えません。 

「これらをすべてガラス張りにしない限り、協議には1秒たりとも応じない」
と、涼しい顔で突っぱねてください。

4 「原罪(不貞と遺棄)」を盾にする

相手は
「経済状況の変化」
という目先の数字だけをクローズアップして、悲劇の主人公を気取ろうとします。 

しかし、忘れてはいけないのは、この紛争の根本原因が
「相手の度重なる不貞と遺棄」
にあるという事実です。 

この
「原罪」
が未だ解消していない以上、都合のいい経済事情だけを不当に重視して減額を認めることは、法的にも道義的にも到底許容されるべきではありません。

結論

相手が仕掛けてきた
「自作自演の減額ゲーム」
に付き合う必要はありません。 

「過去の清算」

「隠し事の全開示」
という強烈なストレートを投げ返し、相手が白旗を上げて丸裸になるまで、堂々と持久戦を貫いてください。 

不誠実な相手には、徹底した
「疑い」

「条件闘争」
こそが、最大の防御であり最強の攻撃なのです。

著:畑中鐵丸