00285_ケーススタディ_「やったつもり」を根絶する完了報告の鉄則

「あの件、どうなった?」
「あ、忘れてました。やったつもりだったのですが・・・」。

 職場で日常的に交わされるこの会話が、企業にとって致命的なダメージをもたらすことをご存知でしょうか。 

「指示を出したから終わったはずだ」
と安心するのは、地雷原で目隠しをして歩くようなものです。 

本記事では、日常業務に潜む
「やったつもり」
という病理を解き明かし、小さなタスクであっても必ず
「完了報告」
を求めることが、いかにして組織を崩壊から救うかについて、マネジメントの視点から解説します。

<事例/質問>

先生、部下の
「業務の抜け漏れ」
について相談させてください。

私は中堅の建材メーカーで法務・総務部長を務めています。 

最近、部下に指示した業務で、
「やったつもりになっていて、実は手付かずだった」
という事態が立て続けに発生しました。

例えば、取引先への重要な通知書の送付が期限ギリギリまで放置されていたり、外部の専門家へ依頼すべき手続きが止まっていたり、さらには、取引先への支払い請求を
「当然しているもの」
と思い込んでいたら、全く請求手続きがなされていなかった、といった具合です。

部下を問い詰めると、
「後でやろうと思って忘れていた」
「他の業務に追われて、やった気になっていた」
と悪気はない様子です。

このような
「やったつもり」
のミスを防ぎ、組織として確実に業務を遂行させるには、どのようなルールや指導が必要でしょうか?

<弁護士畑中鐵丸の回答・アドバイス・指南>

部長、お悩みの点は、多くの組織を静かに、そして確実に蝕む
「不治の病」
とも言える問題です。

結論から申し上げます。

 「『小さなことでも処理をしたら必ず報告する』というルールを徹底し、『完了報告がないものは、一切手付かずである(=ゼロである)』と冷徹に見なす仕組みを作ること」
です。

部下の
「やったつもり」
は、例えるなら
「レストランで注文を取ったウェイターが、厨房にオーダーを通したつもりで満足し、客が餓死寸前になるまで放置している」
のと同じです。 

ビジネスにおいて、
「頭の中で処理した」
ことは
「何もしていない」
ことと同義です。

この病理を根絶するためのマネジメントの鉄則を解説しましょう。

1 「やったつもり」は目に見えない時限爆弾である

法務や総務の仕事において、お礼状などの書類の送付や手続きの依頼、あるいは請求業務などは、
「作業」
としては小さく地味なものかもしれません。 

しかし、その小さな作業が遅れることは、会社にとって致命傷になり得ます。

「請求していると思ったら、全く請求していない」 

これなどは、会社の血液であるキャッシュフローを自ら止めている自殺行為です。

部下は
「小さな金額だから後回しにした」
「小さなことだから後回しにした」
のかもしれませんが、ビジネスにおける
「小さな手続き」
は、爆弾の導火線を切る作業と同じです。

ハサミを握ったつもりで放置すれば、いずれ大爆発を起こします。

2 「完了報告」という安全装置を起動せよ

この問題を防ぐための唯一の特効薬は、
「完了報告」
の徹底です。

指示を出した側は、
「指示を出したから終わるだろう」
と楽観してはいけません。

それは性善説に溺れた怠慢です。

「小さなことでも、処理をしたら必ず報告する」
ことを部下に義務付けてください。

例えば、
「〇〇さんへの礼状を送りました」
「××先生への手続き依頼を完了しました」
という、たった一行のメールやチャットで構いません。 

この
「完了の合図」
があって初めて、そのタスクは
「終わった」
と認識するのです。

3 報告がない=「やっていない」という冷徹な前提に立つ

そして、管理者であるあなた自身もマインドセットを変える必要があります。 

「期限が近づいているのに完了報告がない。まあ、あいつのことだから、当然やっているだろう」 

この
「だろう運転」
が、事故を引き起こします。

完了報告が上がってこないタスクは、
「絶対にやっていない」
「完全に忘れ去られている」
という悲観的な前提(最悪のシナリオ)に立ち、即座に
「あの件、完了報告が来ていないが、どうなっている?」
と追及のメスを入れてください。

「ボールを投げたつもりで、自分のグローブの中で腐らせている」
部下に対しては、ボールが手から離れたことを音と光(完了報告)で確認するまで、決して目を離してはいけないのです。

結論

「やったつもり」
のミスは、個人の記憶力や注意力に依存している限り、永遠になくなりません。

「処理したら報告する」
という極めてシンプルで機械的なルール(仕組み)を導入し、それを組織の血肉とすること。 

それこそが、見えない時限爆弾から会社を守る、最も安上がりで確実な防衛策なのです。

著:畑中鐵丸