00280_ケーススタディ_「役員のなり手がいないなら、解散します」_組織の安楽死_フリーライダーを断つ「解散」の作法

「役員なんて誰もやりたくない。でも、誰かがやってくれないと困る」。 

多くの任意団体や組合が、この
「フリーライダー(タダ乗り)」
の問題に頭を悩ませています。 

しかし、現役員が自己犠牲で延命措置を続けることは、組織にとっても健全ではありません。 

本記事では、次期役員の選出が難航する団体を舞台に、あえて
「解散」
という選択肢を突きつけることで、構成員の当事者意識を強制的に覚醒させる、荒療治としての総会運営術について解説します。

<事例/質問>

先生、もう限界です。

知恵をお貸しください。

私は、ある地域の
「観光・物産振興協議会(仮称)」
の会長を務めています。 

この会は、地元の商店主や企業が集まって活動しているのですが、近年は活動がマンネリ化し、役員の負担ばかりが重くなっています。 

私も含め、現執行部はもう何期も留任しており、疲弊しきっています。 

「次は誰かに代わってほしい」
と打診しても、会員たちは
「忙しい」
「器じゃない」
と逃げ回るばかり。

そのくせ、
「会が無くなると困る」
「もっとイベントをやれ」
と要望だけは一人前です。

7月末に総会を控えていますが、またなし崩し的に
「現執行部の続投」
を押し付けられそうです。 

この
「地獄の奉仕活動」
から抜け出し、かつ、会員たちに責任ある行動を取らせるためには、どのようなシナリオで総会に臨めばよいでしょうか?

<弁護士畑中鐵丸の回答・アドバイス・指南>

会長、お疲れ様です。 

あなたは
「ボランティア」
であって、
「奴隷」
ではありません。 

嫌なら辞める権利がありますし、組織を維持する義務など、どこにもありません。

ご相談の状況を打破するための特効薬は一つです。 

「組織の脳天に拳銃を突きつけ、『お前らが引き継がないなら、こいつ(組織)を殺す』と脅すこと」 
です。

穏やかではありませんが、これが唯一、フリーライダーたちの目を覚まさせる方法です。 

次回の総会に向け、以下の
「三段構え」
のシナリオを実行してください。

1 招集通知に「遺言」を書く

まず、総会の招集通知に、単なる事務連絡ではなく、強烈なメッセージ(爆弾)を仕込みます。 

以下の文言を付記してください。

「現役員としては、次期続投は考えておりません。自選、他薦も含め、次期役員を募りたいと考えます。 なお、万が一、就任を了承する役員が規定数に達しない場合、本会がすでに一定の役割を果たしたものとして、『会を解散すること』も含め提案させていただきたいと考えています」

これは、
「脅し」
ではありません。 

「役員がいない組織は存続できない」
という、物理法則の確認です。 

「役員候補者が出てこないことを想定した腹案(=解散・清算スキーム)」
を用意していることを匂わせ、 
「我々は本気だ。誰も手を挙げなければ、この会は終わる」 
という覚悟を示してください。

2 総会当日のシミュレーション

当日は、以下の3つのパターンのいずれかになります。 

どれに転んでも、あなたにとっては
「勝利(解放)」
です。

• パターン1:役員やりたい奴がわんさかいる(あるいは渋々手を挙げる)
「解散されたら困る!」と慌てて誰かが手を挙げた場合。 
「どうぞどうぞ」と、満面の笑みでバトンを渡し、引き継ぎをして、あなたは自由の身です。

• パターン2:役員規定数に満たない 
誰も手を挙げない、あるいは定足数に足りない場合。 
「仕方ないですね。担い手が集められないなら、この会に存続の価値はありません。ニーズがないということです」 と冷静に宣言し、「解散」の審議に入ります。
これも、あなたは自由の身です。

• パターン3:役員はやらないが、お前ら(現執行部)頑張れと言う 
最も多いのが、この「無責任なガヤ」です。 
「俺は忙しいから無理だが、会長、あんたが適任だ。もう一期やってくれ」などと言う輩に対しては、 「それは『責任ある議論』ではありません」 と一刀両断し、瞬殺してください。 
「私が辞めると言っている以上、続投はありません。代わりがいないなら、解散(パターン2)です」と突き放します。

3 「解散」は敗北ではない

もし、パターン2(解散)になったとしても、嘆くことはありません。 

役員のなり手すらいない組織は、すでに
「脳死状態」
です。 

無理やり延命措置(現役員の犠牲)を続けるよりも、安楽死させてあげて、残った財産を会員に返還する(清算する)ほうが、よほど誠実で経済合理性のある経営判断です。

結論

「誰かがやってくれる」
という甘えを許してはいけません。 

「あなたがやるか、組織が死ぬか」 

この二択を突きつけることこそが、リーダーとしての最後にして最大の教育的指導なのです。

堂々と、引き金を引く準備をして、総会に臨んでください。

著:畑中鐵丸