00279_ケーススタディ_繁忙期における“お断り”と“プロモーション”の境界線

「忙しいから断る」
は、二流の仕事です。 

一流は、断りながら
「次回の予約」
を取り付けます。 

本記事では、繁忙期に舞い込んだ有力者からの依頼に対し、あえて
「相談のみ」
を受けることで、案件受任以上の
「プロモーション効果」
を狙う、したたかな営業戦略について解説します。

<事例/質問>

先生、新規案件の受任可否についてご判断をお願いします。

先日お問い合わせをいただいた、中堅精密機器メーカーの金田社長(仮名)からのご依頼の件です。 

内容は、取引先との契約トラブルに関する対応依頼なのですが、現在の私の事務所のリソース状況を確認したところ、既存案件で手一杯であり、これ以上の新規受任は物理的に困難な状況です。

丁重にお断りするメールをお送りしようと思いますが、相手が社長様ということもあり、将来的な関係構築の可能性を考えると、単にお断りするだけでよいものか迷っております。 

角を立てずに、かつ、将来の
「種まき」
になるような断り方はあるのでしょうか?

<弁護士畑中鐵丸の回答・アドバイス・指南>

結論から申し上げます。 

原則は
「塩対応」。

しかし、相手が食い下がってくるなら、
「毒見(お試し)」
だけさせてあげなさい。

プロフェッショナルとして、品質を維持できない状態で仕事を受けるのは、自殺行為です。 

ですから、まずは事務的に、かつ冷徹にこう返信してください。

 「残念ですが、案件ピーク時なので、現在受けられません」

「忙しい」
というのは、プロにとって最高のブランド価値の証明です。 

「いつでも空いてますよ」
という暇な店より、
「予約でいっぱいです」
という店の方が、行ってみたくなるのが人間の心理です。

しかし、ここで終わらせては、ただの
「つれない店」
です。 

もし、先方が
「どうしても」
と食い下がってきた場合。 

あるいは、あなたがその社長に
「将来性(太客になるポテンシャル)」
を感じた場合。

その時は、プランBを発動します。 

「案件受任はできない前提ですが、『相談のみ』ということであれば、お引き受けします」 
と提案するのです。

ここには、高度な計算があります。 

この
「相談」
の目的は、問題解決(実務の提供)ではありません。 

「当該社長へのプロモーション」 
です。

つまり、 
「ウチは忙しいから、あなたの面倒を最後まで見ることはできない。 けれど、1時間だけ、私の『脳みそ』と『切れ味』を見せてあげましょう。 そうすれば、あなたが抱えている問題の『急所』と『解き方』くらいは教えてあげられますよ」 
というスタンスです。

これは、満席の高級レストランが、 
「お席はご用意できませんが、シェフのスペシャリティの試食だけなら、厨房の隅で立ち食いでよろしければどうぞ」 
と言うようなものです。 

そこで出された料理が絶品であれば、客は必ず
「次はいつ空いていますか?」
と予約を入れて帰ります。

「仕事はしないが、実力は見せる」 
受任できないときこそ、最大の営業チャンスなのです。 

どうぞ、恩着せがましく、最高のアドバイスをしてあげてください。

著:畑中鐵丸