00266_ケーススタディ_弁護士費用は高いか安いか?_「700万円の損失」を見過ごす経営者の“節約”という名の病

「弁護士に頼むと金がかかるから、自分たちで何とかしよう」

その節約精神は立派ですが、実はその判断が、会社に
「目に見えない巨額の請求書」
を回していることに気づいていますか? 

本記事では、長引くトラブルへの対応を題材に、弁護士費用という
「目に見えるコスト」
と、対応に追われる社員の人件費や逸失利益という
「目に見えないコスト(機会損失)」
を天秤にかけ、真に経済合理的な
「喧嘩の終わらせ方」
を解説します。

<事例/質問>

先生、判断に迷っております。

当社は、首都圏でファミリーレストランを展開しております。 

実は、8ヶ月前から、ある取引先(内装業者)と工事代金の精算(約200万円)を巡ってトラブルになっております。 

相手方の主張は理不尽なもので、支払う義務はないと考えていますが、連日のように電話やメールで執拗な請求が来ており、担当役員と総務部長がその対応に追われています。

もう限界なので、先生に依頼して黙らせたいのですが、着手金や成功報酬など弁護士費用を聞いて二の足を踏んでおります。 

今回の紛争額に対して割高ではないでしょうか? 

もう少し安く済ませる方法はないでしょうか?

<弁護士畑中鐵丸の回答・アドバイス・指南>

御社は、すでに700万円をドブに捨てている、ということを認識していますか?

弁護士費用をケチって、あと数百万捨てるか、それとも着手金を払って出血を止めますか、というのが、今回のご相談の本質です。 

提示された
「弁護士費用」
の金額だけに目を奪われてはいけません。 

プロの視点から、御社が現在置かれている状況を
「因数分解」
し、3つの選択肢(松・竹・梅)を提示しましょう。

1 見えないコスト:「700万円の損失」と「幻の2店舗」

まず、現状認識です。 

この8ヶ月間、担当役員様と総務部長様は、この不毛なトラブル対応にどれだけの時間を割かれたでしょうか? 

ヒヤリングによれば、私の試算では、お二人8時間コスト、エネルギー、ストレスによる生産性低下を合わせると、優に
「1.5人月」分
は費やされていますね。 

役員クラスのコストですから、軽く見積もっても約700万円の損失でしょう。

さらに言えば、その時間とエネルギーを本業(新規出店やメニュー開発)に使っていれば、今頃
「あと2店舗」
は出店できていたかもしれませんね。 

その逸失利益まで考えれば、損失は1000万円を超えるでしょう。 

「弁護士費用が高い」
とおっしゃいますが、御社はすでにその10倍以上のコストを、知らず知らずのうちに
「対応コスト」
として支払っているのです。

2 解決のための「松・竹・梅」3つのプラン

現状の
「出血」
を止めるために、私が提供できるプランは以下の3つです。 
ご予算と、社長の
「腹の括り方」
に合わせてお選びください。

• プランC(梅):ゴーストライター作戦(コスト:低) 

社長名義で相手に送る回答書を、私が
「添削」
します。 
費用は顧問料の範囲内で結構です。 
ただし、矢面に立つのはあくまで
「社長(会社)」
です。
相手からの電話や怒鳴り込みに対応するのは、引き続き御社のスタッフです。 
今の
「ダラダラ出血状態」
が劇的に改善する可能性は低いでしょう。

• プランB(竹):案山子(かかし)作戦(コスト:中) 
「弁護士名義」
で、法的なスタンスを明確にした警告書(内容証明郵便)を一本打ちます。 
「これ以上ガタガタ言うなら、弁護士が出てくるぞ」
という牽制球です。
相手がこの
「案山子」
を見てビビって退散してくれれば、最もコスパが良い解決になります。 
ただし、相手が
「上等だ! やってやる!」
と逆上して交渉や訴訟に発展した場合、この費用は無駄になり、別途追加費用がかかります。

• プランA(松):ターミネーター作戦(コスト:高) 
私が正式に代理人となり、窓口をすべて一本化します。 
相手に対し、
「裁判も辞さない」
という強烈な書面を叩きつけ、完膚なきまでに叩き潰すか、あるいは一切の手出しをさせない状態に持ち込みます。 
御社への連絡はすべて遮断させますので、明日から社員の皆様は業務に専念できます。 
「金輪際、二度と関わりたくない」
なら、これ一択です。

3 経営判断の物差し

私が社長の立場なら、どう判断するか。

 「このトラブルが、経営上どのくらいの負荷(邪魔)になっているか」 
で決めます。

もし、相手が単なる
「うるさいハエ」
程度なら、プランB(案山子)で追い払ってみるのも手です。 

しかし、相手が
「業務を阻害するガン」
になっているなら、迷わずプランA(ターミネーター)で手術をして、患部を切除します。

結論

着手金は、単なる法的サービスの対価ではありません。 

「社長と社員が、明日から安眠し、本業に集中するための『自由と時間』を買うためのチケット代」 
です。

すでに700万円に相当するリソースを浪費した今、さらに傷口を広げるか、手切れ金を払って止血するか。 

それは法律論ではなく、高度な
「経営判断(損切り)」
の領域です。

著:畑中鐵丸