「ねぇ、あれってどうなってるの?」
「この話、もう決まってるの?」
「誰が関わってるの?」
こうした“何気ない確認”を装った問いかけに、あなたはどこまで答えますか。
たとえ、相手が上司であれ、同僚であれ、あるいは外部の関係者であれ――
「何をどこまで話すか」
は、情報を扱ううえで、避けて通れない判断の連続です。
一見、ただの会話。
しかしその裏にあるのは、
「情報を取りにくる人たち」
の存在です。
確認のカタチをした“仕掛け”
すべての確認が悪いわけではありません。
問題なのは、それが
「何のための確認か」
が曖昧なまま、無防備に語ってしまう構造です。
たとえば、
・進捗を装って、核心に迫ってくる
・雑談の流れで、こっそり裏情報を引き出そうとする
・あいまいな表現で、先に“言質”をとろうとする
こうした問いかけの本質は、“確認”ではなく“回収”です。
情報を取りにきているのです。
語らせようとする“あの手、この手”は、日々、更新され続けています。
情報を取りにくる人のタイプとは
情報を欲しがる人には、いくつかのタイプがあります。
(1)探偵型:
意図を明かさず、質問を重ねて真相に近づこうとするタイプ。
(2)善意型:
「助けになりたいから」と言いながら、結果的に情報を引き出してしまうタイプ。
(3)世話焼き型:
相手の状況を“先回りして理解しよう”とする中で、無自覚に踏み込んでくるタイプ。
(4)無意識型:
自分がどれだけの情報を引き出しているか、まったく気づいていないタイプ。
どのタイプにせよ、共通しているのは、
「自分が情報を集めている」
という自覚のなさ。
そして、語ってしまう側が
「悪意がなさそうだから」
と油断してしまう構造です。
「かわす力」は、拒絶よりも高度な技術
大切なのは、相手を敵とみなすことではありません。
情報を渡さないために、むしろ“自然に話を終わらせる”技術が求められるのです。
たとえば――
・「まだ確定していないので」と言い切る
・「今の段階では共有されていない情報です」と線を引く
・「その件は、担当が別にいます」と話題をそらす
いずれも、相手を否定せず、情報のやりとり自体を“保留する技術”です。
そして、もうひとつの高度な方法が、
「あえて“確定していないことにしておく”」
というテクニックです。
「まだ白紙です」
「案が複数あって」
「方向性を検討中です」
情報を“確定しない”という曖昧さで包むことで、相手の興味をかわす。
これは、
「嘘をつく」
のではなく、
「情報を確定させない」
という高度なバランスの技です。
「答えない文化」をチームで共有する
語らないことを個人に任せてしまうと、どうしても
「つい話してしまった」
が起こります。
だからこそ、チームとして
「答えない方針」
を共有しておくことが重要です。
・聞かれても「ノーコメント」と返す
・情報の扱い方にチーム内ルールを定める
・むしろ「何も言わないことが誠実である」という文化をつくる
そうすることで、
「誰がどこまで話すか」
をめぐる判断がブレにくくなります。
確認される前に、構えておく
情報を“持っている側”に求められるのは、ただ守るだけではなく、
「聞かれる前提で構えておく」
ことです。
つまり、情報は漏れるものだという現実を前提に、
「語らない態度」
を意識的に設計しておく。
その積み重ねが、あなた自身の信頼を守り、
組織の情報を、じわじわと外に流さない“防壁”となっていくのです。
語らないとは、ただ拒むことではありません。
流れを読んで、かわして、受け流す。
そんな
「技術」
です。
語らないとは、ただ沈黙することでもありません。
守るべきものを見極めて、あえて語らないという
「仕組み」
です。
著:畑中鐵丸