00117_「ベンチャー企業経営者が陥りがちなビジネス・マネー・人生全般における失敗」の傾向と対策_12_聴講者からの質問その4_先生は、刑事事件って受けられます?刑事事件について取り組む場合、どのような対応をされていますか?「畑中鐵丸先生”ならでは”のアプローチ」とかってありますか?

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本コンテンツシリーズは、アジア経営者連合会「ALA経営塾」主催にて、令和3(2021)年3月25日(木)17時30分開始にて行われました、弁護士畑中鐵丸の講演「組織と個人の用心棒、顧問弁護士の使い倒し方・ベンチャー企業経営者特有の失敗の傾向と対策~ベンチャー企業経営者なら皆さん身に覚えがあるビジネスやプライベイトの失敗事例と対策のための”あの手・この手・奥の手”を25年超のキャリアをもつベンチャー弁護士が直接伝授します~」の講演レジュメ及び講演録から編集したものです。なお、本講演内容は、筆者(講師)独自の見解であり、所属組織及びアジア経営者連合会ないしALA経営塾のものとは一切関係ありません。
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刑事事件は、刑事裁判にまでもつれ込んだら、負けです。

99.9%負けますから、こんな不利な土俵で戦うのは、あまりにも愚かです。

もちろん、無罪判決をお取りになったりする刑事「裁判」の名手のような弁護士先生もいらっしゃいますが、その先生でも、「常に、当然に、完全に、何時でも無罪判決を勝ち取れる」ということでもなかろう、と推察します。

要するに、「無罪判決を取れるスキルがある!」などと豪語される弁護士先生(奥ゆかしく、謙虚な私などは、こんな大言壮語は口が裂けても言えません)といえども、無罪が取れなかった「口先ばっかり」「看板倒れ」「約束不履行」のような「失敗事件」もあるとも思われますし、刑事裁判の強烈に高い有罪率(99.9%)を考えれば、単純に考えて、どんなに凄腕の刑事裁判のプロでも表には出さない「失敗事件」も相当の暗数として存在する、と考える方が合理的です。

他方で、そんな私でも、「刑事事件で勝っている」ケースは相当あり、それも結構な割合を占めます。

どうやっているか、というと、「裁判になったら」99.9%負ける、という動かしがたいゲームのロジック、ルールがあるわけですから、このゲームのロジック、ルールを所与として、前提条件をぶっ潰す、というところに注力して、「裁判にしない」「裁判になる手前で事件を潰す」という「やや特殊な刑事弁護活動」を展開するのです。

客観面で争う場面があれば、警察や検察が辟易するまで、徹底的に事実との齟齬を争い、
客観面で争うことが難しくても、主観面(認識面、故意か、過失か、不注意とすら言えない「事故」なのか)を徹底して争い、
客観面・主観面ともに争えなければ、「浪花節(情状面)」で争い、
事件ではなく事故として未立件・立件阻止を目指し、
立件やむなしとしても、不起訴を目指し
つつ、「裁判以前の手前の段階での事件潰し」を画策します。

私や、私が所属する弁護士法人畑中鐵丸法律事務所においては、このような「公判前弁護活動」を中心に刑事事件を取り扱う場合が多いのですが、かなり満足いただいている結果を出しているもの、と自負しています。

他方で、刑事訴訟にまでもつれ込んだら、本当に無罪を目指すのか、あるいは戦略を切り替えて執行猶予や減刑を目指すのか、作戦環境の現実的認識・評価を前提にして、作戦目標について徹底した議論を行い、こちらもしかるべき作戦目標が達成出来るよう、尽力することとしており、「否認事件で無罪判決勝ち取る」と言った劇的な成果はありませんが、当初設定した作戦目標(執行猶予や減刑)は、達成出来、かなり満足いただいている結果を出しているもの、と自負しています。

著:畑中鐵丸